以前、「スコープってなんだろう??」の記事で、スコープについて、そしてスコープ決定までのプロセスを解説しました。今回は、プロジェクトが進行していく中で、決定されたスコープを変える必要が生じた場合にはどうすればいいのか、スコープ変更管理のプロセスについて解説します。

スコープ変更の定義とは?

スコープ変更の定義とは、成果物やタスクの量と質が変わることをいいます。ここで、プロモーションのプロジェクトを例に挙げてみましょう。A社では、テレビ広告を出稿する予定でしたが、検討の結果新聞広告を打つことになりました。こうした変更は成果物の質と量が変わることになるので、スコープの変更といえます。

また、同じテレビCMをつくる場合でも、ありものの素材でCMを打つはずだったのが、新しく取り直した素材でCMを制作するとなった場合には、「素材を撮影する」というタスクが増えるのでスコープの変更になります。

これが大前提! スコープは明確に定めておこう

スコープが変更になるということは、その前提として「最初に決めたプロジェクトのスコープ」が明確である必要があります。スコープを明確にしておかなければ、成果物やタスクに含まれている事柄が曖昧になり、関係者間の認識がずれてしまいます。例えば、発注者側が当然含まれているであろうと認識していたタスクが受注者側では含まれない認識だったため、あとからスコープの変更に伴って追加料金を請求することになった、という場合、双方に混乱が生じることになってしまいます。最初に決まったスコープは成果物・タスクの一覧をもとに関係者間で合意しておき、「ここまではスコープの範囲内」「ここから先はスコープ変更の対象」という境目の認識がずれないようにしておきましょう。

スコープ変更のルールはあらかじめ合意しておこう

スコープの変更管理については、プロジェクトのスコープが確定すると同時に予めルールを合意しておきましょう。スコープの変更についてどのようなルールに則って検討するかといった基準があれば、スコープがマネジメントできない状態に陥ることはありません。

スコープ変更のルールとして、あらかじめスコープ変更の承認について、会議体、メンバー、責任者を合意しておきます。

スコープ変更が及ぼす影響って?

スコープの変更は、成果物とタスクの量と質が変わることをきっかけに、プロジェクトの予算、マイルストーンを含めたプロジェクトの期限に影響を及ぼします。たとえば、スコープが変わると、調整も含めた成果物とタスクの量が変わることによって、コストが余分にかかるため予算を追加しなければいけない、タスクが増えるのでその分マイルストーンを後ろ倒す必要が生じる、などです。

では、これを具体例で見てみましょう。A社では新製品のプロモーションとして、新聞広告と雑誌広告を出す予定でプロジェクトが立ち上がりました。しかし、諸事情により新聞広告はやめてテレビ広告に変更することに。新聞広告からテレビ広告へ、このスコープ変更からは、プロジェクトに以下のような影響を及ぼします。

  • 新聞広告よりもテレビ広告の方が当初予定していた予算よりもコストがかかる
  • テレビ広告の方が新聞広告に比べて入稿の期限が早いのでスケジュールが変わる

また、新聞広告からテレビ広告に変更したことで予算を大きくオーバーしてしまったので、代わりに出稿を予定していた雑誌広告を中止するなど、予算と期限との兼ね合いにより「他の成果物とタスクを減らす」という形で影響があらわれる場合もあります。

スコープ変更のプロセス

では、実際にスコープ変更のプロセスを、順を追って見ていきましょう。

スコープ変更にあたっての影響調査と検討

スコープが決定してからプロジェクトが進行していく中では、課題管理をしながら目的の達成へと近づいていきますが、中には「この課題はスコープを変更しなければ解決できない」という課題が発生します。そうした場合には、スコープを変更する否かの影響調査と検討に入ります。

変更の対象となるスコープごとに

  • 変更しないと解決しない背景・原因(課題)
  • 変更したい該当箇所
  • 変更が予算や期限、成果物、タスクに及ぼす影響

を、過去(背景・原因)・現在(スコープ変更の該当箇所)・未来(影響)を網羅して漏れなく抽出します。

課題管理表に起票する時点で影響範囲が網羅しきれない場合には、漏れを少なくする工夫として、影響調査やレビューを第三者の視点を持っている別のメンバーにお願いすることが効果的です。

スコープ変更にあたっての影響調査は2段階に渡って行う

スコープ変更にあたっての影響調査ではまず、スコープが変更された場合に成果物とタスクに及ぼす影響を調査します。成果物とタスクがどれだけ変わるか明確になることで、次に予算や期限にどれだけ影響するかが見えてきます。このように、スコープ変更による影響調査は「成果物・タスク」→「予算・期限」の2段階に渡って行います。

承認・実行・記録

スコープ変更にあたっての影響調査と検討ができたら、承認・実行・記録のプロセスへと移ります。

①承認

スコープの変更は必ずメンバー間の合意の上で行います。スコープ変更の必要性が生じたらまず、変更についてあらかじめ決めたルールにもとづいて承認を得るようにしましょう。
スコープの変更を承認する際には、該当するスコープの変更がプロジェクトにどれくらい・どんな影響を及ぼすのかを判断基準とします。

②実行

スコープの変更によって「この成果物が変わります」「このタスクに影響があります」といった情報を、担当しているメンバーに周知して、変更後のスコープを実行します。

③記録

スコープ変更を実施したら、「この通り変更されて完了しました」という旨をスコープ変更管理の記録として残します。

ただし、記録は必ずしもすべてのスコープ変更について必要というわけではありません。スコープの変更をすべて記録していくと管理コストが大きくなってしまうので、最終成果物・予算・期限に影響があると判断されるもののみ記録をするようにします。

たとえば、3分間のCM動画をつくるというスコープを1分間のCM動画に変更した場合。これは、できあがったCM動画=最終成果物そのものが3分から1分へ大きく変更されているため、スコープ変更管理の記録を残す必要があります。

逆にスコープ変更管理の記録が不要な例としては、サイト掲載用にA社から画像を買うはずだったが、思うようなものがなかったので同額の画像をB社から買ったという場合。これはコストや期限、成果物とタスクに変化はないので、スコープ変更管理表には記録しなくても構いません。

スコープ変更に至らなかった場合でも履歴は残そう

スコープ変更を検討した結果、影響が大きすぎる、予算の増額などスコープ変更以外の方法で課題が解決可能になったなどの理由でスコープを変更しないことが決定した場合には、その旨を課題管理表に履歴として残します。

きちんと履歴を残すことで、「検討はしたがスコープ変更に至らなかった」という情報を共有すること、次に同じことが起こった際に「なぜスコープ変更に至らなかったか」の理由を参照できること、2つの大きなメリットがあります。

スコープ変更のプロセスを具体例で解説

それでは、スコープ変更のプロセスを具体的に見ていきましょう。
上述の「スコープ変更が及ぼす影響って?」の項ではA社の新商品プロモーションを例に挙げましたが、同じくプロモーションの例で、別のB社のケースをご紹介します。

B社ではこのたび、若年層をターゲットとする新商品をPRするため、予算を200万円としてWeb広告を出すことになりました。

しかし、プロジェクト進行中に新商品のターゲットが少し上の年代であることが判明し、Web広告だけではプロジェクトの目的が達成できないことが考えられるため、Web広告をやめてテレビCMに変えられないかという要求が発注者側から来ました。

そこで検討した結果、Web広告からテレビCMへスコープ変更をした場合、その影響範囲として予算が大きく跳ね上がってしまうため、スコープは変更せず、当初の計画どおりWeb広告を出すことになりました。今回はスコープ変更には至りませんでしたが、課題管理表に「検討の結果スコープ変更はしませんでした」という履歴を残します。

一方で、テレビCMは断念したが新聞広告ならどうだろうという代替案が出されました。影響範囲を調査して承認会議で検討した結果、Web広告と併用する形で小さな広告を打つのであれば予算内に収まりそうであること、成果物・タスクへの影響も最小限に抑えられそうであることから、Web広告と新聞広告を併用することで、発注者側、受注者側、プロジェクト関係者間の合意ができました。

スコープの変更が決定したら、次にプロジェクトメンバーに、Web広告のほかに新聞広告にも載せることになったため、成果物・タスクが変わること、スケジュールについても入稿のマイルストーンが変わることを周知します。

最後に変更後のスケジュールと成果物に沿ってタスクを実行し、タスクが全て完了した時点でスコープ変更管理表に記録をしておきます。

スコープの変更管理にはプロジェクトによって最適なツールを選ぼう

スコープの変更管理をするための成果物には、主にスコープの変更管理表を用います。このスコープ変更管理表には、「◯月◯日に、A社とこういう理由でこのスコープの変更を検討した。検討の結果、影響範囲は◯◯に及ぶが、問題がないので変更することを合意。変更した成果物とタスクはこのとおり実行された」といった形で履歴を残します。

スコープ変更管理表の例
スコープ変更タイトル |  日付  |  原因・背景    |    影響範囲
成果物A→B     | ◯月◯日 |  背景       |  

またプロジェクトによっては、スコープ変更管理表を使わず、成果物・タスク一覧で一元管理する場合もあります。この方法ならスコープ変更管理表と成果物・タスク一覧との二重管理にならないというメリットがあります。しかしその反面、どこが変更されたのか分かりにくい、勝手に変更されてしまうリスクがあるといったデメリットもあります。

スコープの変更管理で重要なのは、最初に決まったスコープはなにか、そのスコープのどの部分が変更されたのかが明確に示せることです。スコープ変更管理には、プロジェクトによって最適なツールを選ぶようにしましょう。

まとめ

  • スコープ変更の定義とは、成果物やタスクの量と質が変わることをいう
  • スコープの変更管理のルールは、プロジェクトのスコープが確定すると同時にあらかじめ決めておく
  • スコープに変更があった場合は、最終成果物に影響があると判断されるもののみ記録をする
  • スコープの変更管理にはプロジェクトによって最適なツールを選ぶ

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