家族に「カレーが食べたい」と言われたので、あなたはにんじん、たまねぎ、じゃがいも、牛肉をひと口大に切り、お鍋でコトコト煮てカレーライスをつくりました。しかしできあがったカレーを見て、家族は言いました。
「本格インドカレーをナンと一緒に食べたかった」

これはプロジェクトの成果物が抽象的であったために起こった悲劇といえます。こうした食い違いを防止するためには、成果物を目に見えるかたちにリスト化し、それらを現実的に完成に導くルールを定める必要があります。

今回は「成果物管理って何をするんだろう」というテーマで、成果物管理についてお話をします。

成果物管理には「準備」と「運営」がある

成果物管理の「準備」のお話をする前に、「成果物」について少し説明をしましょう。「成果物」とは、タスク(作業)が完了したときに成果として完成したものをいいます。例えば、「このプロジェクトで新規顧客を増やす」という目標を定めた文書や、企画書、仕様書・設計書など、タスクを完了したときにできあがる文書などはすべて「成果物」といえます。

「構成管理」「ファイル管理」「ドキュメント管理」「文書管理」などと呼ばれることもある成果物管理には、「準備」と「運営」2つのフェーズが存在します。成果物管理の「準備」ではプロジェクトの成果物をリスト化し、成果物を管理するためのルールを定めます。そして「運営」では、リスト化した成果物が「準備」で定めたルールにもとづいてつくられているかをチェックし、必要に応じてルールを変更するなどの調整を行います。

成果物管理の「準備」とは

成果物管理の準備その1「成果物をリスト化する」

成果物管理の「準備」ではまず、プロジェクトの目的・目標をもとに設定したスコープから成果物を洗い出し、リスト化することからスタートします。

身近な例として、冒頭の「本格インドカレーづくり」で成果物管理の準備を説明してみましょう。本格インドカレーづくりの目的はいわずもがな本格インドカレーをつくることですので、そこからスコープを設定し、以下のように成果物を洗い出します。

  • 食材の買い出しメモ
  • 買ってきた野菜
  • ひと口大にカットした野菜
  • 炒めたカレースパイス

これらの中間成果物が最終的には1つに集約されて、最終成果物である「本格インドカレー」ができあがります。当初の目的である「本格インドカレーをつくる」はこうして達成されることになります。

では、システム開発のプロジェクトの場合はどうでしょうか。ここでは、プロジェクトの目的は「開発したシステムを使って今ある問題を解決すること」です。そこからまずスコープを設定し、問題を解決するための「システム」や「システムの運用手順書」といった最終成果物を導き出します。
プロジェクトが最終成果物に行き着くまでには、画面構成の指示書、スケジュール管理をするための進捗管理表、クライアントとの契約書など多くの中間成果物ができあがります。成果物管理の「準備」ではこのように、タスクの結果生じる「成果物」を一覧にします。

成果物管理の「準備」で注意すること

このように成果物をリスト化するときには、最終成果物ができあがるために中間成果物としてなにが、いつ必要か、前後のインプット・アウトプットを意識しましょう。先ほどの本格インドカレーづくりでは、中間成果物として「炒めたスパイス」が抜けていると、いざスパイスをお鍋に入れる段階で「スパイスが生のまま」という事態になり、カレーづくりが滞ってしまいます。こうした成果物の抜け落ちはプロセスの上流工程でも起こりがちですので、プロジェクトの目的から成果物を洗い出す際には、なにがインプットとなって次の成果物ができるのかを考えましょう。

また、最終成果物に結びつかない中間成果物がないか、アウトプットにつながらない成果物がないかをチェックすることも、無駄な作業やコミュニケーションを防ぐために重要です。

成果物のインプット・アウトプットを意識する

成果物管理の準備その2「成果物の管理ルールを決める」

成果物を一覧化したら、次は成果物を管理するルールを策定しましょう。成果物を「どこに」「どのようなフォーマットで」「誰が」格納するかといったルールを決定し、プロジェクトメンバー間で共有します。

例えば成果物をデータでやり取りするプロジェクトの場合には、成果物をつくった人が保存先に迷うことのないよう、

  • フォルダの命名ルールを定める
  • フォルダの階層を決める
  • WordまたはExcelなどデータのフォーマットを決める
  • バージョン管理の方法を決める(更新日付、バージョンを入れるなど)

など、成果物管理の準備段階であらかじめルールを決めて、格納先を用意しておくことが重要です。

ここまでが成果物管理の「準備」でやっておくことです。

成果物管理の「運営」とは

目的から成果物を洗い出してリスト化し、管理のルールを決めたら「運営」のフェーズに入ります。ここでは、リスト化した成果物が準備段階で定めたルールにもとづいてつくられているかチェックする、定めたルールではプロジェクトに支障をきたすと判断した場合にはルールを変更・補足するなどの対応をします。

例えば、以下のような行為は成果物管理の「運営」にあたります。

  • 準備段階でリスト化した成果物がそろっているかを確認する。
  • 成果物管理のルール(成果物のフォーマットや格納先など)が守られているか確認する。

これを先ほどの本格インドカレーの例に当てはめると、「買い出しメモにあった食材がすべてそろっているか」「買ってきた肉が冷蔵庫に入れられているか」をチェックすることは成果物管理の「運営」といえます。
また、「切った野菜があらかじめ用意しておいたタッパーに入りきらない場合に、ルールを変更して大きめのボウルに入れる」など、プロジェクトに支障をきたすルールを変更・補足するのも成果物管理の「運営」での重要な要素です。

成果物で進捗をはかる ~スケジュール管理との関連性~

成果物管理には以前お話した「スケジュール管理」とも密接な関係があります。

例えば、ある資料をつくるというプロジェクトのために期限を2ヶ月後に設定するとしましょう。
ここでもしも成果物を定義せずにプロジェクトをスタートした場合、2ヶ月後に完成した資料を確認したらページ数や内容が目的に合致していなかったということが起こりえます。
しかし、「成果物のページ数が100P必要です」「10Pごとに1つ、全体で10個の目次で構成しましょう」という成果物の洗い出しと、「1週間ごとに10Pずつ書いていきます」という成果物を元にした進捗把握の基準・ルールの策定をすることで、プロジェクトの進捗を成果物ベースでより正確に把握することができ、同時に成果物の軌道修正や具体的な中身のすり合わせがしやすくなります。
同じように、成果物を元に進捗を把握する方法として、「資料のドラフト案をこの日までにつくりましょう」「第2版はここまでにつくりましょう」「この日に完成版を仕上げましょう」と成果物を完成度の段階別に分ける方法もあります。

このように成果物管理には、成果物を具体的にイメージするという主目的のほかに、進捗を成果物ベースで可視化してスケジュールの遅延を防ぐという効果もあるのです。

成果物管理の終点は?

準備段階でリストアップした成果物がすべてできあがり、依頼主の承認を得て納品し、成果物が手から離れた時点で成果物管理は終了します。
上記の本格インドカレーの例でいえば、食材を揃える、野菜・肉を切る、スパイスを炒めるなどタスクを経て中間成果物ができあがり、最終成果物として本格インドカレーができあがった時点。システム開発では、システムがリリースされたところで成果物管理が終了します。

まとめ

  • 成果物管理の「準備」では、プロジェクトの目的から成果物を洗い出してリスト化し、運営のルールを決める
  • 成果物管理の「運営」では、リスト化した成果物がルールにもとづいてつくられているか把握し、必要があればルールを変更・補足する。

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