目的に合わせて使い分けたい、コミュニケーション・ツール(対面・電話・メール・チャット・課題管理)の選び方
マネジメントの観点から前回コミュニケーション設計の4つのポイントを取り上げましたが、設計した後に実際の場面でどういうツールが最適か選び方に困ったことはありませんか?
なんとなく目的を持って使っているイメージはあるけど、具体的に理由を言葉にできずにとりあえず使ってみる、なんとなく選んでしまっている、周りの声を聴いているとなかなか目的に合わせて選びきれずにいる印象がありますね。
そこで今回は、公開ワークショップ(生産性が上がる実践的リモートワークのススメ in KOKUYO MESSE)でも実施したワークを一部参考にしながら、目的に応じてツールを使い分けるために、それぞれのメリット・デメリットを考えながら、コミュニケーション・ツール(対面の会議も含めて)の選び方をご紹介したいとおもいます。
そもそも、コミュニケーション・ツールにはどんな種類があるか?
コミュニケーション・ツールのメリット・デメリットを比較する上での判断基準をまずは考えてみましょう。
メリット・デメリットを比較するための判断基準の例
コミュニケーションツールのメリット・デメリットは、
- 情報の量がどれだけ伝えられるか(対面の場合は、非言語の情報もある)
- 情報の質が高められるか
- 情報を伝える・受け取る手間と手軽さ
- 情報を伝える・受け取るスピード
- コミュニケーションコスト
- やり取りした証拠が残るか
- 意思決定に結びつく重要度(オフィシャル度)
などが、主要な判断基準として有効といえそうです。他にもあればぜひ考えてみてください。
対面の会話
立ち話や相手の席に行っての相談など、対面の会話では言語的・非言語的な情報も合わせて、伝わる・受け取れる情報量は多い特徴があります。また、メールやチャットに比べて相手がその情報を受け取ったかどうかが即座に判断できるので、緊急性のある要件を伝えたいときにも向いています。また、自らの考えを図を使って説明することができます。ホワイトボードや紙に書き可視化することで、メールやチャットよりも相手に伝わりやすいというメリットがあります。
しかし、対面の会話には思い立ったときに呼び止めて話をすることができる手軽さがある反面、何を話したか証拠が残らない、あまり重要ではない話でも流れで話してしまい思った以上に時間を使ってしまうというデメリットがあります。
対面の会議
複数の人が同時に話ができる対面の会議では、会話同様に話してはどんな感情で話しているのか?聞き手はどんな感情で聴いているのか?言語的・非言語的な情報どちらも多くの情報を伝え受け取ることができます。また、一度に大人数に対して伝えられるというメリットもあり、言った言わない問題にもなりにくく、議事録が残ったり、重要な会議では決定事項をもとに稟議書が発行されたりするため、オフィシャル度の面でも申し分ありません。
一方で、デメリットとしては対面会議はほかのコミュニケーションツールに比べ、一番コストがかかります。会議に出席する人の人件費、交通費等のコストはもちろん、参加人数が多い会議ではスケジュールを調整の手間が発生します。また、人数が多ければ多いほど合意形成の難易度は上がり、時間は使ったけど何も決まらないというデメリットが発生しやすいため、会議の設置や会議体を設計する際には会議で扱う議題を選定しておく、議論を仕切れるファシリテーターをアサインしておくなど対策となる準備のスキルが求められます。
ビデオ会議
離れた地点同士だったり忙しい人通しが1つの場所に集まるのはなかなか難しい場合があります。1つの場所に集まる必要がなく移動の時間がかからない分、日程調整が簡単なビデオ会議は他の対面しないツールとしては表情が見える分、一番情報量が多いといえます。
また、最近のビデオ会議ツールでは、資料も画面共有ながら話ができるため、対面で話すことをほとんど補えるという状況になりつつあり、PCの操作が苦手な人でも参加しやすいというメリットがあります。
デメリットとしては、映像に写らない部分の非言語情報が受け取れないことが言えます。顔で笑っていても、貧乏ゆすりしているなど実は納得していないというときを見逃すことはあります。人間関係ができていたり、論理的に何が課題でどう解決するのか?という話ができるあまり大きな問題にはならなさそうです。
おススメツール紹介:実際に使っているオンライン会議システム:ZOOM
海外のツールで日本語版はありませんが、ブラウザで翻訳して使用しても支障がありません。
50地点同時にビデオ会議への参加・ビデオ録画・ホワイトボードの利用などが利用でき、非常におススメのツールです。
電話
ビデオ会議の場合は、PCやビデオ機器の前にスタンバイが必要ですが、電話の場合はちょっと座ったタイミングや歩きながらでもコミュニケーションをする手軽さがメリットとしてあります。
表情が見えないため非言語情報は声だけになりますが、なかなか会えない相手と難しい話をする場合や緊急で伝える要件がある場合には、内容だけでなく声のトーンで伝えることもできます。
デメリットとしては相手の時間を奪ってしまう点でしょう。特にそのタイミングが忙しい場合などは、それだけで相手の生産性を下げることになります。他のツールとうまく使い分けながら、電話をかけるタイミングに配慮をできればそんなに大きな問題にはならないでしょう。
メール・文書や資料
伝える側としては一度文章としてアウトプットするので、頭を整理する準備になり伝えたいポイントを絞る訓練にもなります。また受け取る側にとっても読むタイミングを選べるため、会議や電話のように時間に縛られないというメリットがあります。言語的な情報しか伝わらないため会議に比べて情報量は劣りますが、相手先の情報と合わせてメール本文や文書という証拠が残るので、対面での立ち話やチャットに比べるとオフィシャル度は高いといえるでしょう。
その半面、メールは相手方から返信があるまで読まれたかどうかが分からず、返信がない場合は既読したか確認するという作業が生じる場合があります。また、一言で伝えれば済む要件でも、メールだと「お疲れ様です。~ 以上、よろしくお願いいたします。」などつい形式ばった挨拶文を入れてしまうので、手軽さにおいてはチャットに劣ります。また、言語的な情報しか伝わらないので感情を伝えにくいというデメリットも。ネガティブなコメントなどをメールで伝える必要がある場合には、対面でもフォローするなどうまく使い分けることが大切です。
チャット(Chat)
チャットの最大のメリットは、なんといってもリアルタイムなやり取りができる即時性と、その手軽さにあります。
一方で、手軽なため不要な話を持ち込んでしまったり、やり取りした内容がどんどん流れて探せなくなってしまったり、メッセージの保存限度があるため証拠が残りにくいというデメリットもツールによってはあります。また、チャットツールを導入する際には目的別にスレッドを分けるなどの工夫をしなければ、プロジェクトメンバーに対し選別されてない雑多な情報が次々プッシュ通知されてしまいます。チャットは伝える相手とテーマを選んで上手に活用できれば強力なコミュニケーションツールと言えそうです。
おススメツール紹介:実際に使っているオンラインChat:Google Hangout(グーグル ハングアウト)
G suite(旧Google apps)、Gmailのメールと一緒の画面で使える利便性の良さから利用しています。
マネジメント(課題管理)ツール
課題管理ツールとは、コミュニケーションの軸を課題に特化したマネジメントツールです。
メールやチャットでは1つのメッセージで混在して複数の課題を書いてしまうことがありますが、課題管理ツールは1つの課題毎に1つのチケットとして起票するためツールの特性として複数の課題の混在を防げます。
また、1チケットに記載した課題毎のステータス(発見・共有:オープン~着手・完了:クローズ)が管理しやすく、課題毎に経緯と結果がエビデンスとしても残るため、オフィシャル度の高いツールといえます。
課題として起票される内容は、課題毎に紐つく背景・影響・解決策案・実際の解決策の情報が関係者からのコメントともに1つのチケットとしてまとまっているため、伝える側は課題に関する情報のみを記載すればよく、また受け取る側も自身が関わる課題のみを受け取ればよいため、情報の伝達にかかる時間やコストの面でもメリットがあります。
デメリットは、チケットに起票する際の課題とTO DO(タスク)を切り分ける、切り分けた課題に優先順位を付ける、最適な解決策の選択肢を洗い出し選択できる、それらを支えるメンバーのロジカルシンキング(論理思考)やマネジメントスキルが必要という点が上げられるでしょう。
ただ、課題を中心としたコミュニケーションは、最小限のコミュニケーションで多くの課題の解決が実施できるため、遠隔地同士でも課題中心に議論を進めることができ、コミュニケーションコストを大幅に改善することができます。
おススメツール紹介:実際に使っている課題管理ツール:TIMESLIST
自社ツールではありますが、異なるメンバーの複数プロジェクトの課題を、一つの画面で見られる利便性から重宝しています。
実際に使用する場面を想定し、コミュニケーション・ツールはどう選ぶか?
メリット・デメリットとコミュニケーション・ツールの種類を知った後は、実際の現場をイメージした選び方です。
「発散」・「収束」・「承認」3つの目的から考えるコミュニケーションツールの選び方
複数人でコミュニケーションする場合には、「発散」・「収束」・「承認」の3つの目的があります。
「発散」の目的は、1人の脳より複数の脳を使って、より多くの情報やアイデアを得るためです。
例えば、定例会議のスケジュール進捗報告をする場面です。著しく遅れている成果物やTO DO(タスク)に注目して、遅れている原因はなにか?その原因はどのような課題が考えられるか?現状よりも遅れるリスクはあるのか?
課題やリスクを特定する前に、課題やリスクが特定されていたら解決策を特定する前に、まずは抜け漏れがないように徹底的に洗い出すアクションが「発散」です。
課題やリスクが洗い出されている場合は、解決策・予防策でアクションする前に、まずはどのようなTO DO(TO DO)が考えられるのか?を洗い出す場面でも良く使われます。
※「発散」のおススメツール:対面の会話、対面の会議、チャットが向いています。
「収束」の目的は、「発散」の段階で洗い出された課題・リスク・TO DO(タスク)の合意です。
例えば、この課題は解決する、このリスクは対策をしない、このTO DO(タスク)は後回しにするなどを合意するアクションが「収束」です。
他にも、この課題はAさんに持って帰ってもらう、洗い出された選択肢のメリット・デメリットをBさんに検討してきてもらうなどの担当決め、課題を受け取った担当者はいつまでに解決策を選択し実行できるかの期限決めなどの場面は良く使われます。
※「収束」のおススメツール:電話、チャット、マネジメント(課題管理)ツールが向いています。
最後に、「承認」の目的は、解決した課題の結果や実行したTO DO(タスク)の結果、リスクへの対策や中間・完成した成果物に責任を渡す・引き受けるです。承認は担当者間の合意よりも重要な合意で、結果に失敗やミスがしても責任を取れる人だけが、責任を引き受けられるという違いがあります。
例えばそのプロジェクトを実行するかどうか、予算をどれくらい付けるか?どういう人物をアサインするか?どの道具やツールを使用するか?情報はどう取り扱うか?失敗やミスが起きた場合を想定して、責任者に直接言葉をもらって現地を確認したり、文書にしてサインしてもらうアクションが「承認」です。
「承認」のおススメツール:対面の会議、メールが向いています。
現実には、ツールの中で混在して行っている場面もあると思います。
例えば、対面の会議の中で、最初の20分は「発散」、次の20分は「収束」、最後の20分は「承認」というような時間の使い方です。
どれが正解ということはありませんが、それぞれ特性があるので目的に合わせて使い分けることが効果的に思います。
情報リテラシー(受け取る情報と咀嚼するスキル)から考えるコミュニケーションツールの選び方
伝える側と受け取る側の情報に格差があるコミュニケーションでは、伝える側が受け取る側の情報リテラシーに応じてツールを選択すると配慮が必要です。情報リテラシーとは、情報を受け取る側の既に受け取っている情報の量と、受け取った情報を咀嚼できるスキルの両方で構成されます。
例えば、入社したての新入社員は業務についての知識やスキルが不十分なため、担当を受け持った課題を解決する能力を備えていたとしても、メールやチャットの指示だけでは何をすればいいか、どのように動けばいいのか理解することができません。十分な経験があるメンバーでも、プロジェクトに参加した直後は現状が分からないため、スキルはあっても受け取る情報が断片的になり、正確な判断が難しくなります。
上記からわかるように状況によって誰でも情報リテラシーが低い立場にはなりえます。なので情報リテラシーが低いことは決して悪ではなく、伝える側が受け取る側に合わせてツールを選択する配慮が必要です。相手の情報リテラシーをメールやチャットなど文字情報を中心にコミュニケーションをしていたとしても、対面の会議や立ち話などでフォローをすることで受け取る側の受け取った情報の正確性を高めます。
情報リテラシーの高低に応じてコストなどを考慮しながら下記のようにツールを使い分けましょう。
情報リテラシーレベル「低」コミュニケーションコスト「高」:対面 ※対面の会話、対面の会議
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情報リテラシーレベル「中」コミュニケーションコスト「中」:会話 ※電話、テレビ会議
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情報リテラシーレベル「高」コミュニケーションコスト「低」:文字 ※メール、チャット、マネジメント(課題管理)ツール
まとめ
- ツールの種類とメリットデメリットをそれぞれ理解する。
- コミュニケーションする際の目的を元に、コミュニケーションを設計し、ツールを使い分ける。
- 論点となる課題を絞り、対面をどれくらい減らせるか?が生産性を上げるポイント。
明日からやってみよう!
- 目的を定めたツールを、1つ意識して実施してみよう!