「働き方」はどうやったら変えられる?個人とチームの働き方改革を変える、3つの”はたらく”技術とは?
「自分の置かれた立場で、働き方を変えることは本当にできるのかな?」そういう想いはみなさんお持ちだと思います。
ただ、今日からすぐに変わることは難しくても、今日から働き方を変える取り組みを始めることは可能です。
働き方を変える視点には大きく2つあります。
自分自身と所属するチーム・組織自体が働き方を変える内部的な視点と、法律や企業の人事制度で働き方を変える外部的な視点です。
外部的な視点にある働く人を取り巻く環境を整える制度(法律、雇用条件、労働時間、育児・休暇制度etc)を時代に合わせるのは重要ですが、自分一人の希望や力だけではなかなか法律や制度を変えることは難しかったり、変えられたとしても時間がかかります。
対称的に、働いている人自身や一緒に働くチーム・組織に所属する一人一人が働き方を変えようとする意志があれば、明日からでも働き方を変える取り組みを始めることは可能です。
この記事では、「法律や企業の人事制度で働き方を変える外部的な視点」については参考情報の共有に留め、
「自分自身や所属するチーム・組織が働き方を変える内部的な視点」に焦点を当て、案を提示しながら深堀りします。
”創造性”を求める前に、まずは”生産性”を高める。
企業が働く人に求めるのは、生産性(50から100を得ていたが、30から100を得る)と創造性(0→1、1→100、1+1=3)です。
創造性を発揮するには、じっくり落ち着いて考える時間がない忙しい中ではなかなか難しいと思います。
まずは忙しい毎日から抜け出し創造性を発揮する時間を確保するために、成果物の質と量は変えずに時間や労力を小さくして、生産性を高める必要があります。
イメージ的には、働く人が100人いて、成果物はそのままに1人1日1時間の余白時間が生まれるという状態です。
そのためには、どんな方法があるでしょうか?
働き方を変えられる、働く人が上達すべき3つの働く技術。
働く人100人を例に、生産性の観点から1時間の余白を生み出せるポイントを細分化して考えてみると、
- 個人の生産性 :個人が担当する成果物の質と量を、1日1時間早く到達する。
- 対人の生産性 :会議や話し合いで得られる結果を、1日1時間早く到達する。
- チームの生産性:200営業日後に期限があるチームのプロジェクトが、25日早く到達する
働くこの3つの生産性を高められる技術があれば、1日1時間、うまくいけば3つ組み合わせて1日3時間の余白を作れそうです。
多様な答えはありそうですが、普遍的(どんな時代・業種・仕事)に使える技術という観点から、私たちが考え出した結論は以下の3つになります。
ロジカルシンキングの技術は、なぜ個人の生産性を高めるか?
ロジカルシンキングとは、論理的に思考を続けられる筋力と体力を支える技術を指しますが、個人の生産性を高める主な理由は以下の3つです。
- 情報を構造的に(結果的に精度高く)受け取れる。
- 複数の情報源から、構造的に受け取った情報を取捨選択(自分の意見を加える、も含め)、編集できる。
- 編集した情報を、自分の意見として構造的に(結果的に精度高く)伝えられる。
ロジカルシンキングの技術があると、情報を受け取る精度が高くなるので、ミスもやり直しも少なくなります。
また、対人の生産性を高める技術にもつながりますが、対人コミュニケーションの準備(聴く・伝える)の精度が上がるため、コミュニケーションに関する準備の生産性が高まります。
例えば、あなたは職場に寄せられるお客さまからの苦情を減らせる業務改善案を思い付いたとしましょう。
ロジカルシンキングがあれば他の案よりもなぜそれが良いか判断できます。
また、業務改善案を導入する権限を持っている上長に提案する前に、上長の立場に立って全体を俯瞰し、どうすれば上長が首を縦に振るか、必要とする情報は何かを準備できます。
ファシリテーションの技術は、なぜ対人の生産性を高めるか?
ファシリテーションとは、合意形成の量産ができる技術を指しますが、対人の生産性を高める主な理由は以下の3つです。
- 意見が異なる未合意点を見定め、未合意となっている論点を洗い出せる。
- 洗い出した未合意点の優先順位を合意できる。
- 優先順位の高い未合意点から、合意に導き決着をつけられる。
ファシリテーションの技術があると、合意点を早々に切り離し、未合意点に議論のポイントを絞れるができるため、不要な議論を減らせます。
不要な議論を減らせることは、重要な議論ができる時間を確保することと直結しています。
重要な議論ができる時間を確保し、未合意点をどんどん合意に導ければ、長い会議が短くなる・長い会議でも多くの合意ができ対人の生産性が高まります。
前項で示した例の続きで、上長に業務改善案を提示する場面を仮に想定してみましょう。
上長に確認が必要なポイントが合意形成における未合意点です。
業務改善案で良くあるのは、目的や目標、必要となる費用と期間、実施によるネガティブな側面を、一つづつ確認し合意するだけでも最低5つの項目で合意ができます。
プロジェクトマネジメントの技術は、なぜチームの生産性を高めるか?
プロジェクトマネジメントとは、期限内に目的(=問題を解決する)を達成する技術を指しますが、チームの生産性を高める主な理由は以下の3点です。
- 最初に目的と期限を合意するため、曖昧な目的と期限がなくせる。
- 合意した目的に紐づいた成果物、成果物に紐づくタスクとスケジュールから、課題を洗い出せる。
- 洗い出した課題に優先順位を合意し、重要度・影響度が高い課題から解決できる。
プロジェクトマネジメントの技術があると、複雑な状況や膨大な情報の中から、課題だけを抽出して洗い出せます。
課題だけを抽出できると、課題に紐づかないタスクやTO DOを実行しないため、無駄な作業の発生を最小限に抑えます。
また、重要な課題に焦点を当てて解決できれば、細かい課題を一気に解決できたり、不要な課題の発生を防ぎチームの生産性は高まります。
こちらも前項で示した例の続きで考えてみましょう。
合意形成の積み上げにより、上長と目的と期限を合意し、業務改善プロジェクトが発足しました。
目的を具体的なスコープ(範囲)が詳細に落とし込めていない。求められる業務品質レベルが現場と合意できていない。体制に誰をジョインするのがベストがまだ決まっていない。など、技術を持っていれば仮説を元に課題をたくさん洗い出せます。※5~10分あれば、30個は軽く課題を洗い出せます。
例も交えて簡単に解説しましたが、これら3つの技術の上達は、生産性の向上に直結し働き方を変えられることを掴んでいただけたと思います。
働き方を変えたいという話が、チームや組織内で出たときには、ご紹介した3つの技術を意識して日々の仕事の中に取り入れてみてください。
なぜ、この3つの技術なのか?他に大事な技術はない?
この3つ以外にも重要な技術は、もちろんあります。
少し考えただけでも、マーケティング、ヒューマンリソース、アカウンティング、営業、技術開発、AI、デザイン、クリエイティブなどなど。
ビジネス以外でも、サイエンス、物理、心理、音楽、絵画、スポーツ、芸術、伝統文化、メディアリテラシーなどなど。
数え上げればキリがありませんが、学びの分野には必ず技術が存在します。
それでもなぜ、ロジカルシンキング・ファシリテーション・プロジェクトマネジメントなのでしょうか?
それは、どの分野にも論的に考え、対話をして合意し、目的と期限を定めてチームで成果を出す場面が存在するためです。
よく考えてみると、3つの技術は普遍的であることが分かります。
例えば、明治維新当時を想像してみると、体系化や認識がなかったため3つの言葉はなかったとおもいますが、関係する人それぞれが根拠を持ちよって意見を出し合い、分かれている意見を合意に向けて話し合い、200年も続いた幕府を終わらせる大政奉還という大きな目的を達成しています。
また文献があるわけではないですが、食べ物がなかった縄文時代を想像してみると、どうやって食べ物を確保するか、植物を育てるのか狩りをするのか家畜を育てるのか、意見を出し合い、合意して、安定的な食べ物の確保を達成して今日まで来たのではないでしょうか。
2000年前も使われていて、物凄いスピードで時代が変わっていく現代から、2000年後も使われているのはこの3つの技術だと考えていて、この3つの技術を知って理解し、技術の上達が働き方を変えてきた変えていくことが歴史からも読み取れます。
働き方を変える背景を読み解く-モノ不足の時代から、モノ余りの時代へ。
少し現在を歴史の視点で見てみましょう。
18世紀中旬の産業革命以降から20世紀の終わりまでは、モノが足りなかった時代です。
21世紀を迎えた現代はどうでしょうか?100円で購入できるモノや、使わなくても購入・破棄されるモノが大量に増え、モノを作っても必ずと言っていいくらい代替製品があり、モノが余っている時代です。
この時代の変化で、働いた成果はどう変化したのでしょうか?
どちらの時代にも共通して求められているのは、「問題の解決」です。
モノが足りなかった時代は、モノを作る事=問題を解決でしたが、
モノが余っている時代では、モノを作る事で解決される問題よりも、大量のゴミや環境の破壊など生んでしまう問題の方が大きくなっています。
働く人にモノを作るための「時間」が求められた時代から、「問題を解決する知恵」が求められる時代に変わってしまった。これが背景にあります。自分の考えをうまく纏められない、会議が長い、チームの目的が期限に間に合わない、結果長時間労働になってしまう。これらは全部問題で解決する必要がありそうです。
ここまで読んで既にお気づきの方もいると思いますが、
3つの技術は、生産性だけではなく、創造性でも必要不可欠な普遍的な技術で、以下のように言い換えもできます。
- 個人の創造性を高める技術 :ロジカルシンキングの技術
- 対人の創造性を高める技術 :ファシリテーションの技術
- チームの創造性を高める技術:プロジェクトマネジメントの技術
土台から「働き方」を改革し、生産性を上げ創造性を発揮するためには、「時間で働く」から「問題を解決できる知恵で働く」へ変える必要があります。
※参考文献:法律や企業の人事制度で働き方を変える、外部的な視点に関する
日本の法律や制度ばかりに注目してしまいますが、諸外国の制度も参考にしながら法律や制度については意見を出し合い合意を積み上げれば、
法律や制度も少しずつ変えられるので、ぜひチャレンジしてみてください。
JETRO 欧州・ロシア雇用制度一覧 2016年10月
首相官邸 働き方改革実行計画 平成29年3月29日
【JETRO 欧州・ロシア雇用制度一覧 2016年10月 目次】
1.ドイツ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
2. フランス・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
3. オランダ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9
4. デンマーク・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12
5. スウェーデン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15
6. フィンランド・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17
7. 英国・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20
8. アイルランド・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・27
9. イタリア・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・33
10. オーストリア・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・36
11. ベルギー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・38
12. スペイン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・41
13. チェコ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・43
14. ハンガリー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・46
15. ポーランド・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・49
16. ルーマニア・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・51
17.スイス・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・54
【首相官邸 働き方改革実行計画 平成29年3月29日 目次】
1.働く人の視点に立った働き方改革の意義
(1)経済社会の現状
(2)今後の取組の基本的考え方
(3)本プランの実行
(コンセンサスに基づくスピードと実行)
(ロードマップに基づく長期的かつ継続的な取組)
(フォローアップと施策の見直し)
2 .同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善
(1)同一労働同一賃金の実効性を確保する法制度とガイドラインの整備
(基本的考え方)
(同一労働同一賃金のガイドライン)
① 基本給の均等・均衡待遇の確保
② 各種手当の均等・均衡待遇の確保
③ 福利厚生や教育訓練の均等・均衡待遇の確保
④ 派遣労働者の取扱
(法改正の方向性)
① 労働者が司法判断を求める際の根拠となる規定の整備
② 労働者に対する待遇に関する説明の義務化
③ 行政による裁判外紛争解決手続の整備
④ 派遣労働者に関する法整備
(2)法改正の施行に当たって
3 .賃金引上げと労働生産性向上
(1)企業への賃上げの働きかけや取引条件の改善
(2)生産性向上支援など賃上げしやすい環境の整備
4 .罰則付き時間外労働の上限規制の導入など長時間労働の是正
(基本的考え方)
(法改正の方向性)
(時間外労働の上限規制)
(パワーハラスメント対策、メンタルヘルス対策)
(勤務間インターバル制度)
(法施行までの準備期間の確保)
(見直し)
(現行制度の適用除外等の取扱)
(事前に予測できない災害その他事項の取扱)
(取引条件改善など業種ごとの取組の推進)
(企業本社への監督指導等の強化)
(意欲と能力ある労働者の自己実現の支援)
5 .柔軟な働き方がしやすい環境整備
(1)雇用型テレワークのガイドライン刷新と導入支援
(2)非雇用型テレワークのガイドライン刷新と働き手への支援
(3)副業・兼業の推進に向けたガイドラインや改定版モデル就業規則の策定
6 .女性・若者の人材育成など活躍しやすい環境整備
(1)女性のリカレント教育など個人の学び直しへの支援などの充実
(2)多様な女性活躍の推進
(3)就職氷河期世代や若者の活躍に向けた支援・環境整備
7 .病気の治療と仕事の両立
(1)会社の意識改革と受入れ体制の整備
(2)トライアングル型支援などの推進
(3)労働者の健康確保のための産業医・産業保健機能の強化
8 .子育て・介護等と仕事の両立、障害者の就労
(1)子育て・介護と仕事の両立支援策の充実・活用促進
(男性の育児・介護等への参加促進)
(2)障害者等の希望や能力を活かした就労支援の推進
9 .雇用吸収力、付加価値の高い産業への転職・再就職支援
(1)転職者の受入れ企業支援や転職者採用の拡大のための指針策定
(2)転職・再就職の拡大に向けた職業能力・職場情報の見える化
10.誰にでもチャンスのある教育環境の整備
11.高齢者の就業促進
12.外国人材の受入れ
13.10 年先の未来を見据えたロードマップ
(時間軸と指標を持った対応策の提示)
(他の政府計画との連携)
まとめ
・「働き方」を変えるには、外部的な視点と内部的な視点がある。内部的な視点で働き方を変えられないと外部的な視点の効果は薄い。
・現代はモノ不足の時代から、モノ余りの時代への転換期。働き方を変えることは時代背景とも合致している。
・働き方を変えることは可能であり、個人個人の3つの技術を上達させることが一丁目一番地である。
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