【Think! 2050 REPORT】プロジェクトデザイン視点で、未来を読み解く
本レポートは、考える力を実践で使う延長として、今ある情報で考えを尽くすとどういう未来(2050年)が想定されるか?について仮説を探り一覧化した内容です。
また、2200年くらいの未来の歴史書に2000年~2050年がどういう記載がされるか?という逆算した見方でも内容をレビューし、漏れなくダブり無くというよりは、各テーマ毎の論理性を重視し、こういう未来になることはおそらく大きくは違わないというところまでを言及するに留めています。
この内容を読んでいただいたみなさん自身や、みなさんが関係する組織の”ありたい姿”を描き、実際のサービスや働き方や社会のあり方に近づくけるようなプロジェクトデザインのインプット情報になれば幸いです。
経済
[お金:増え続け、分配が課題となる]
- お金の総量は増え続ける。
- 増え続けたお金は、余剰のお金を持つ人(特に大資本)の投資(労働所得ではない)を促進し、一部の人や企業に益々お金が集まる。
- お金の格差は広がり、お金の分配が課題となる。
- 仮想通貨の登場により、法定通貨(お金)以外での決済が広がる。お金という概念が広がる。
- 法定通貨の相対的な価値が下がる。
- 仮想通貨やポイントが所得として扱われる。
- 巨大企業が多くの国を超え、発言権や影響力がより強まる。
[モノとサービス:余り続け、価格が下がり続ける]
- 量と質で二極化が鮮明になる。
- 量を担保する超巨大企業。
- 質を担保する個人。専門性を持った職人の増加。
- モノとサービス余りの状況は進み、価格は底値まで下がる。同時にゴミ削減が問題となる。
- 物販は50~90%引きに留まらず、あらゆるモノが100円均一のような底値に近づく。
- 耐久財(家電や車など)は販売数を限定した数量限定販売か、予約販売の受注生産になる。
- 新品で耐久財を購入する層が相対的に減少し、中古品の売買や譲り合いが活発になる。
- 持っているモノによる交換、貸し借りなどお金を伴わない取引が促進する。
- 3Dプリンター・機械化・IT化で、誰もが一点モノを作り出せる。
- 洋服・家具・電化製品などの耐久財だけでなく、道具・部品・材料などの消費財も大量の在庫を抱える現在の業態から、在庫が減り売り場面積が減る。
- 一点モノのデータ設計・作成ができる技術者が重宝される。多くは無償公開される。
- 自然保護と材料資源の獲得が課題となる。
- 身体に触れる家具・洋服・道具は、自然由来のモノが選択される。
- 配送の必要性は下がり、省エネの観点からも、配送を伴わない地産地消が選択される。
- 余っている車・電車・飛行機の荷台、自動運転など、配送方法の選択肢は広がる。
- 配送方法の選択肢の広がりにより、賞味期限を伴う消費財は廃棄が減り、地産地消の物々交換で分配が促進される。
- ITコストの減少、翻訳の精度向上で、誰もが世界へ向けてサービス提供できる。
- 地理的な市場競争ではなく、世界市場が対象になるサービスが増加する。
- 材料やプロセスなど、モノやサービスが提供されるまでの全ての情報が公開される。
- 個人・団体に関わらず、倫理や共通善に反する言動は隠せなくなり、即時性は早くなり、顕在時のダメージは大きくなる。
- 地球環境の持続可能性は、全ての人類にとって取り組むべきテーマという共通認識が広がる。
- 大手企業にとって無視できないテーマとなり、取り組まないことが企業イメージを損なう時代になる。
- 実際の成果を確認する消費者が増え、購買の判断基準に組み込まれる。
- 社会性を伴う事業活動(ソーシャルブランディング)への取り組みが促進する。
[働き方:変わるシゴト内容と、変わる働く理由]
- 多くのシゴトは「処理する」から「生み出す」へシフトする。
- 定常業務(テンプレートやマニュアルに沿った毎日・毎週・毎月・毎年の繰り返し業務)は機械化・AI化が進み、プロジェクト業務(目的と期限のある一回性の業務)は人の役割として残る。
- 覚えるシゴトを時間内に消化する(AIや機械が消化する)働き方から、問題を解決する働き方へシフトする。
- ありたい姿を設定する、ありたい姿と現状との差を埋める活動は、人のシゴトとして残り続ける。
- プロジェクトは短納期化、小チーム化、アジャイル化する。
- タスク管理型のマネジメントから、課題管理型のマネジメントに変化する。
- 求められる人材は、タスクワーカーから、イシューワーカーへシフトする。
- タスクワークはゼロにはならないが、必要な人材としては相対的に減少する。
- 役職は上下関係型から、機能分担型へシフトする。
- マネジメントは、トップダウンからボトムアップへシフトする。
- 特殊な設備を必要としない全ての職種で、リモートワークが促進する。
- 工場等でも遠隔操作が進み、メンテナンス・修理などの一部を残して人のかかわりが最小化する。
- 労働に付随する移動距離は最小化する。
- 繁忙期と閑散期の働き方が二極化する。
- 閑散期は、別の組織の繁忙期を手伝う。
- 副業やマルチワークが広がる。
- 働きたい人は、副業やマルチワークなど多様なシゴトを兼務する。
- 働きたくない人は、長期休暇を選択する。
- 特定の組織に所属という概念が薄れ、複数の組織と対等な関係をもつ働き方が増える。
- 終身雇用の効率が最大化した時代が本格的に終わり、必要な役割をその都度調達するプロジェクト型の働き方へシフトする。
- 一人一業から、n人n業へ、誰もが兼務や複数のプロジェクトに参加する。
- 部署間や他企業のプロジェクトへの参加などに従事する。
- 同時進行の複数のシゴトで成果を求められる。
- 時差を利用した多地点での 24時間業務が進行する。例:日本→アメリカ→オランダ
- お金・モノ余りの環境で、お金のために働かないという選択肢が認められる。
- 点数評価の資格やテストは最小化し、論文形式や実践形式のテストに移行する。
社会
[教育:働き方の変化と共に、教育から学びへ]
- 労働環境の変化から、「覚える」ことを主体とした教育の必要性は下がる。
- 受験用の教育塾、英語を含めた言語教育は最小化する。
- テストや受験など点数による量的評価はなくなり、質的評価に置き換わる。
- 他文化・歴史について知る「覚える」教育は増える。
- 「覚える」教育は多くが動画によって置き換えられる。
- 「覚える」教育は読み書きソロバンの最低担保を残しつつも、リベラルアーツ(自由に生きるための一般教養)、リベラルスキル(自由を獲得するための技能)が教育の土台となる。
- 教育の場は最小化し、「考える」「議論する」教育ではない「学ぶ」場に移行する。
- 他文化・歴史についての検証と議論の場が増える。
- 哲学、社会学、心理学など経済学以外の分野で議論の場が増える。
- 教育の土台の上には、個々人の興味や研究対象が尊重される。
- 働くことと教育が繋がっていた時代から、働くことと学びたいことが離れる時代になる。
- 学びたいことを学ぶ、生涯学習が進む。
[暮らしと衣食住:お金とモノが余り、増える選択肢]
- お金余り・モノ余りの状況は促進し、お金が少なくても、物々交換で生活が成立する。
- 貧困への社会保障も、お金ではなくモノ・サービスの分配によるサポートが進む。
- 約半分が捨てられる衣食業界で、生産制限と同時に、廃棄・リサイクル・リユースが進む。
- 格差の広がりが教育格差を生み、物理的なコミュニティの分断だけではなく、精神的なコミュニティの分断が進む。
- 離婚率は上がり、結婚という概念が薄れる。
- 子どもを求めていないができてしまった男女から、子どもを求めている家族へ、養子縁組や子どもの受け入れが進み、血縁のつながりがない多様な家族構成が広がる。
- 「病気を治療する」という考え方から、「病気を予防する」という考え方が広がる。
- 化学系の医薬品の利用は減少する。
- 自然由来の医薬品の利用が増加する。
- 病気予防の観点から、食の安全の注目が高まる。
- 化学系の食品添加物や農薬・肥料の利用量は減少する。
- 家畜の医療品やホルモン剤の利用料は減少し、餌や飼育方法も病気予防の考え方が取り入れられる
- 生活コストが低い田舎暮らしが広がる。
- 都内と地方の2拠点暮らし。
- 季節によって住む場所を変える暮らし。
- 精神的なコミュニティの分断により、加害者・被害者間の認識に差がある犯罪が増える。
- エネルギーの地産地消と、分散発電・分散消費が進む。
- 原子力発電は、放射性廃棄物を無効化できる技術が確立するまでは廃止・縮小が進む。
- エネルギーを作る地域と、景観も含めた居住地域のゾーニングが進む。
環境
- 大気汚染の影響で、水質悪化はさらに進む。
- 地球に住む運命共同体として、企業だけではなく個人も無視できなくなる。
- 温暖化への積極的な対応が、国・企業・個人の信頼性を高める。
- リサイクル・リユースを初めとする、省エネ・省ゴミの活動が広がる。
- 動植物で絶滅危惧種が増え、遺伝子を残す活動が進む。
以上、2018年1月初稿。