これまでこのサイトでは、「課題管理はどう進めれば効果的だろう」というテーマでプロジェクトマネジメントについて詳しくお伝えしてきましたが、ひとつひとつの「課題解決」もまた重要です。
ここでは、実際に課題を解決する手法を5つのプロセスに基づいて解説します。

課題解決の5つのプロセス

「洗い出した課題をどう解決すればよいか」。プロジェクトの目的を期限内に達成するためには避けて通ることのできない大きなテーマですね。
課題を解決する精度と確実性を上げるためのプロセスは以下の5つです。

  1. 課題の選択
  2. 解決策の洗い出し
  3. 評価軸の定義
  4. 評価軸による採点
  5. 解決策の選択

この基本のプロセスを理解しておくことで、例え課題解決がうまくいかなかったとしても、前のプロセスに立ち戻り、課題が解消しなかった原因を探ることができます。それでは、各プロセスについて具体的に解説します。
課題解決の5つのプロセス

1.課題の選択

プロジェクトの目的を期限内に達成するためにはまず、「あるべき姿」と「現状」の差から問題を導き出し、そこから課題を洗い出します。
課題を洗い出したら、プロジェクトの目的達成のために優先順位の高い課題を選択します。
課題の優先順位付けをする際の基準は「重要度(質)」と「影響度(量)」。重要度が高く、影響度が大きい課題を選びます。重要度は「その課題が解決したら、1人の人がどれくらい嬉しいか」、影響度は「その課題が解決したら何人嬉しいか」と考えるとわかりやすいでしょう。
課題の選択は1人で行わず、必ず複数人で行うことで、選択する課題の偏りを防ぐことができます。プロジェクトメンバー間やステークホルダーみんなで合意することがベストです。

2.解決策の洗い出し

課題を選択したら、その課題を解決するための解決策を洗い出します。「課題:解決策」は必ず「1:複数」です。1つの課題に対して必ず複数の解決策を洗い出すようにします。

解決策の洗い出しのコツは、もれなくダブりなく(MECE)。洗い出しの観点に漏れやダブりがないよう偏りなく解決策を立てることがポイントです。

もれなくダブりなく解決策を洗い出すには、1人ではなくプロジェクトメンバー複数人で取り組む、どうしても解決策が思いつかない場合は過去の事例を参照したり専門家に聞くなどで情報を集める、1日、1週間など時間に猶予を置いてじっくりと解決策のアイデア出しを行うなどの方法があります。

3.評価軸の定義

課題に対する解決策を洗い出したらそれぞれを評価して、最終的にどの解決策をとるか選択する必要があります。このプロセスでは、解決策を選択するための評価軸を定義します。

評価軸を定める目的は、各解決策が「どれくらい解決できるか(解決策を講じることでどれだけの効果が見込まれるか)」「どれくらい手間がかかるか(どの程度負担が生じるか)」「新たな課題を生まないか」を明確にすることです。解決策の洗い出しと同じくもれなくダブりなく評価軸の洗い出しをします。このとき、品質、コスト、期限、自社、競合、顧客といった定量的な視点だけでなく、慣習や心理など定性的な面も考慮して、その課題に合った評価軸を定義します。全て漏れなく網羅することは難しくても、重要な評価軸を逃さないことが大切です。

また、例えば業務効率の改善を目的としたプロジェクトの解決策に対して「この解決策の実施で売上がこれくらい上がる」のような本来の目的から外れた評価軸を設定しないように注意しましょう。

4.評価軸による採点

上記で定義した評価軸をもとに、解決策を採点します。
評価軸による採点では、「この解決策のこの評価軸に3点をつけたのはなぜか」という質問を受けた場合に、点数の基準を担当者が説明できる準備をしておきます。

採点の例は、解決策のコストが100万円以上=1点、50万円以上=3点、0円=5点などですが、期限が限られているプロジェクトでは、こうした評価軸による厳格な採点までは省略されることがあります。その場合でも解決策は単一の評価軸で選ぶのではなく、品質・コスト・期限など、必ず複数の評価軸で評価して選ぶことが重要です。

5.解決策の選択

評価軸での採点が終了したら、最後に解決策を選択します。このとき、選択した課題に対応する解決策は1つとは限りません。無理に1つに絞るのではなく、課題に応じて複数の解決策を選ぶことが重要です。解決策を選択したらそれぞれをタスク化し、担当と期限を決めます。そのタスクを完了した結果ひとつひとつの課題が解決されて、プロジェクトの目的達成に近づいていきます。

しかし、場合によってはタスクが完了したのに課題が解決しなかったり、元の課題が解決するどころか新たな課題が発生してしまうこともあります。そんなときは、「解決策の選択がうまくいかなかった」「そもそも解決策を洗い出しきれていなかった」などの原因を疑い、もう一度解決策の洗い出しに立ち返ってみましょう。それでも課題の解決に至らない場合には、そもそも課題の選択を誤っていたのかも知れません。
課題解決の5つのプロセスをおさえておくことで、このように課題の解決がうまくいかなった場合でも、プロセスを遡って原因を突き止め、再びそこから課題解決に向けた体制を立て直すことができます。

「5.解決策の選択」と「1.課題の選択」を往復する

例えば地球の温暖化問題に関する課題の中でも、「森林伐採」のように一人だけでは到底解決できない大きさの課題もあれば、現実的に解決できる「リユース・リサイクル」のようなサイズの課題まで、大小さまざまなものがあります。根本的な課題を解決して突破口を開くのか、1つ1つの課題を地道に解決してプロジェクトの達成を目指すのかによって、「1.課題の選択」で選ぶ課題は異なるでしょう。
ところが「5.解決策の選択」まで実施した時点で、「課題の粒度が大きすぎて、この解決策を実施するには時間がかかりすぎる」、あるいは「課題の粒度が小さすぎて、解決策を実施しても効果があまり期待できない」といったことが判明するケースがあります。その場合は、「5解決策の選択」で選択した解決策を念頭に「1.課題の選択」をやり直すと、より現実に即した「解決すべき課題」の選択につながるでしょう。
このように、5つのプロセスは一方通行ではなく、往復しながら調整することも必要です。

課題解決のプロセスを会議に応用すると

なお、会議で解決策を選択する場合、「2.解決策の洗い出し」までは各課題の担当者に「解決策の洗い出し」と「その解決策を選んだ理由(評価軸)」の準備を依頼し、会議の当日はファシリテーターが参加者の意見から別の「解決策」と「3.評価軸」を引き出し、「評価軸」と「4.採点」を可視化することで、「解決策の選択」(合意)に導くという方法をとることもできます。

5つのプロセスを活用して課題を解決してみよう

それでは、課題解決の5つのプロセスを、具体例を挙げて見ていきましょう。 

A社では、「業務時間の短縮」をプロジェクトの目的とし、課題の解決を目指すことになりました。

まず、プロジェクトメンバーによる定例会議で「業務時間の短縮」に向けた課題を洗い出します。

  • 仕事の難易度が高くてスキルが合っていないため時間がかかる
  • 上司が忙しくてコミュニケーションが取れず、仕事が前に進まない
  • Bという業務に時間がかかりすぎ、ほかの業務にも支障が出ている

こうした課題の中からより重要度・影響度の高い課題を選択し、各課題の担当者を決めます。

次に、選択した課題に対する解決策をもれなくダブりなく洗い出します。例えば、「Bという業務に時間がかかりすぎ、ほかの業務にも支障が出ている」という課題に対しては、

  • B業務の作業量を減らす
  • B業務の期限を延ばす
  • B業務に人を増やして体制を強化する

などの解決策が洗い出されます。

解決策が洗い出されたら、それぞれの解決策に対する評価軸を洗い出しましょう。

  • Q:品質→その解決策を採ることで仕事の品質に与える影響はどうか
  • C:コスト→その解決策にかかるコストはどうか
  • D:期限→納期に影響が出ないか
  • 慣習→会社の慣習に照らしてこの解決策は妥当か
  • 心理→この解決策で社員のモチベーションに影響はあるか

など、定量面だけでなく、定性面からも解決策を評価できる軸を設定します。

評価軸が設定されたら、各解決策を評価軸ごとに採点していきます。例えば、「コスト」という評価軸で各解決策を採点し、コストがかからないほど高得点とした場合には、

  • B業務の作業を減らす→1点(150万円)
  • 期限を延ばす→5点(50万円)
  • 人を増やして体制を強化する→3点(100万円)

「心理」という評価軸で積極的にやりたいほど高得点とした場合には、

  • B業務の作業量を減らす→3点(どちらでもよい)
  • 期限を延ばす→1点(やりたくない)
  • 人を増やして体制を強化する→5点(積極的にやりたい)

というように採点をします。

上記の例では、一番点数が高かった解決策が「人を増やして体制を強化する」だったとしましょう。そこで、中途採用をする、業務マニュアルを整備して引き継ぎを効率化するなど、解決策をタスク化して実行していきます。タスクを完了しひとつひとつの課題を解決することでプロジェクトの目的である「業務時間の短縮」が達成されました。

実際の職場では、例えば上記の「業務時間の短縮」のような問題が持ち上がった場合、上司から一方的に「時間短縮のためにこの業務を省け」と解決策を命令されることもあるでしょう。上長に指示されたことにはなかなか意見しにくいとは思いますが、上司の案とは別により少ない負担で実行できる解決策があることを提示したり、そもそも上司の命令がプロジェクトの目的に沿ったものかどうかを確認するなどで、相手が上司で意見しにくい相手であってもより良い選択肢の選択を導くことはできます。

1つの解決策だけしか挙がっておらず選択肢が無い場合と、10個の解決策案から解決策を選ぶ場合とを比較すると、10個の解決策から選ぶ方が解決の精度が高いことはイメージしやすいと思います。解決の精度が高いと手戻りが少なくなり、不要な課題を産まないことにもつながります。複数の選択肢から解決策を選ぶことは課題解決の普遍的で原則的な考え方です。

まとめ

  • 5つ(課題の選択・解決策の洗い出し・評価軸の定義・評価軸による採点・解決策の選択)のプロセスに沿い、最初に解決すべき優先順位が高い課題を選択することで、より確実に解決することができる
  • 一番の優先事項は課題の解決だが、不要な課題を産まないという観点からも複数の選択肢から解決策を選ぶ
  • 5つのプロセスを経ても課題が解決しない場合には、前のプロセスに立ち戻って原因を探ることができる

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