4種類のリスク対策 ~予防・軽減・移転・容認~
プロジェクトマネジメントを遂行するにあたっては、予期しないことが起こる場合を想定し、課題管理とは別にリスク管理をしておく必要があります。今回は、リスク対策の方法を具体的に解説します。
リスク対策ってなんだろう
「リスク=Risk」とは、「危険。危険度。また、結果を予測できる度合い。予想通りにいかない可能性」と国語辞典では説明がされています。また、プロジェクトマネジメントにおいては、リスクとは「まだ発生していない潜在的な事象」と定義されています。
(関連記事:リスクってなんだろう?)
リスクはリスクのまま、顕在化しなければよいのですが、一旦リスクが発生すると多かれ少なかれ影響を受けることになります。影響を少しでも軽減し、そもそもリスクが顕在化する確率を少なくするために、 発生前に手段を講じるのがリスク対策の考え方です。
リスクは、発生率の高・低、リスクが発生したときの影響の大・小で評価することができます。発生する可能性のあるリスクをこの枠に当てはめ、発生率が高くて影響が大きいリスクに対しては、発生率が低く影響が小さいリスクよりも優先してなんらかの対策を施さなければなりません。
リスク対策は「予防・軽減・移転・容認」の4種類
リスク対策には、次にご紹介する「予防・軽減・移転・容認」の4つがあります。
A.リスクを発生させない「予防策」
1つ目は、リスクの発生確率を低くする「予防」です。
ペーパードライバーの自動車運転には、事故を起こすかも知れないというリスクが潜んでいます。このリスクの発生確率を低くするには、ペーパードライバー教習に通って運転の腕を上げる、熟練ドライバーに助手席に座ってもらいアドバイスをもらう、そもそも運転しないといった対策が挙げられます。
B.発生しても影響を小さくする「軽減策」
2つ目は、リスクが発生したときの影響を少なくする「軽減」です。
先ほどの自動車運転の例に当てはめると、万が一事故が起きたときの被害を抑えるために後部座席でもシートベルトを締める、高くて質のいいチャイルドシートを使うなどして、ダメージコントロールをするのがこれに当たります。
C.影響を他に移す「移転策」
3つ目が、リスクが起きたときに影響を第三者に移す「移転」です。
交通事故を起こすと、身体への影響が大きいばかりか、治療費や車の修理代など大きな出費が必要になります。もしもペーパードライバーが事故を起こしてしまったら、それを全額自分で負担するのは大変。そこで、自動車保険に入って治療費や修理代を肩代わりしてもらうのです。
D.何もしない「容認策」
4つ目は、リスクの発生を認めてなにもしない「容認」です。リスクが発生する確率が非常に低い、発生しても影響が小さいというケースでとられる対策です。先ほどの自動車運転の例でいうと、田舎道で車道も広く対向車も少ないので、ペーパードライバーでも思い切って運転してしまう、という場合が挙げられます。
リスク対策は1つとは限らない
対策が必要なリスクに対して、何も対策が用意されていない状態は、「リスク対策ができていない」という“顕在化した課題”です。リスクが潜在的な事象だからといって、対策を後回しにしていると、プロジェクトに多大な影響を与えてしまう可能性があります。「D.容認策」をとると判断したリスク以外は、必ず対策を用意しましょう。
上に挙げたリスク対策は、潜在しているリスクに対してどれか1つだけを選択するのではなく、状況に応じて「予防」と「軽減」、「軽減」と「移転」のようにいくつかの対策を組み合わせて適用することもできます。特に、リスクの発生確率・顕在化したときの影響ともに大きなものについては、複数の対策を用意しておくと安心です。
まとめ
- リスクの発生確率・影響の大きさからリスク対策の優先順位を決める
- リスク対策には「予防・軽減・移転・容認」の4種類が存在する
- リスクの発生率・影響の大きさによっては、リスク対策のパターンを複数組み合わせて対策を立てる