マラソンにはスタートとゴールがあります。プロジェクトにも同じように、はじまりと終わりがあります。このように、限られた時間の中で目的を達成するにはあらかじめ実行範囲を決めておくことが重要です。今回は、プロジェクトマネジメントの要となる「スコープ」について解説していきます。
スコープとは

スコープとは「要求から要件化された成果物とタスクの実行範囲」

「スコープ=scope」という言葉を英和辞典で引くと、「(知力・研究・活動などの及ぶ)範囲」と書かれています。プロジェクトマネジメントにおける「スコープ」の語源はまさにここからきています。

プロジェクトには「目的」と「期限」がありますね。冒頭で触れたように、限られた時間とリソースの中でプロジェクトの「目的」を果たすためには、どこからどこまでをプロジェクトの実行範囲にするか、発注者と受注者の間で合意を取る必要があります。

プロジェクトの目的に基づいて、発注者側からは「こんなことをしたい」という要求が出されます。しかしながら、期限やリソース、予算などの理由から、リストアップされた要求すべてを実現するのは非常に難しいことです。そこで、さまざまな制約・前提の中で「できること」を絞り込む作業(要件化)が必要となります。

たとえば、引越作業を1つのプロジェクトに例えて考えてみましょう。
あなたは自宅の引越しにあたり、

+ベッドの運搬
+大型家電(冷蔵庫やテレビ)の梱包・運搬
+こわれもの(食器類)の梱包・運搬
+衣類の梱包・運搬

など、すべての梱包・運搬作業を引越業者に依頼しようと考え、一覧を作成しました。
この時点では「やりたいこと(要求)が全て記載された一覧」です。

しかし、あなたの手元には予算が10万円しかありません。一覧にあるすべての作業を引越業者に依頼するとなると、確実にこの「予算10万円」という制約をオーバーしてしまいます。
そこで、予算内に収まるよう、

-ベッドの運搬を友人に依頼する
-衣類の梱包は自分でする

といった具合に、業者に依頼しない事項を一覧から削っていきました。
こうして、「『できること』が絞り込まれた(要件化された)一覧」ができあがります。
こうしてできあがった依頼事項一覧から引越業者がタスクを洗い出し、タスクの完了に必要な作業量を明確にすることでプロジェクトの範囲=スコープが確定します。

このように、「やりたいこと(要求)」から「やれること(要件)」を絞った成果物とタスクの実行範囲のことを「スコープ」といいます。

「成果物の質・量、タスクの量」が決まればスコープが確定する

「スコープ」は、成果物の質・量、タスクの量すべてがクリアになった時点で確定します。

ここでシステム開発の現場におけるスコープを例に挙げてみましょう。
まず、プロジェクトの目的に従って、つくりたい画面一覧・機能一覧と、一覧に記載された内容を実現する設計書やテストケースを含めた成果物一覧を作成します。リストアップされた成果物の全体量を踏まえて、期限や予算、技術的難易度といった制約・前提条件を照らし合わせて個々の成果物の質を決めていくと、作る優先度が低い成果物が削られたり、逆にプラスαで作るべき成果物が加わることがあります。
こうして出来上がった「つくるもの」の一覧(成果物一覧)に基づいて必要なタスクの量を見積もれば、タスクの量も確定できることになり、成果物とタスクの実行範囲(スコープ)が明らかになります。
最後に、発注者と受注者で実行範囲が合意ができれば、スコープが確定します。

まとめ

  • スコープとは「『やりたいこと(要求)』から『やれること(要件)』を絞った成果物とタスクの対象範囲」である。
  • 「成果物の質・量、タスクの量」が決まればスコープが確定する。

プロジェクトの実行範囲を示す「スコープ」は、今後プロジェクトを遂行するにあたって骨格のような重要な役割を担います。次回の記事では、「スコープ」を決定するうえで大切なことと、実際のプロセスを具体的にご紹介します。