対話で深める一般教養:“教育”のどっち? Think! 2050 in 都留文科大学(対話法とテーマを学び合う:アクティブラーニング・ワークショップ)開催レポート(2018.1.17)
いつもThink! managementをご訪問いただき、ありがとうございます。
教育のどっち? Think! 2050 in 都留文科大学 を2018年1月17日に、ワークショップを開催しました。
今回は、Think! 2050 ファシリテーターの音羽が八ヶ岳へ移住したことで交流が深まった英国人のヘイミッシュ ギリズ 教授:Hamish Gilliesとのご縁で、「未来からの逆算」「考える技術」「合意の技術」「主体的・対話的で深い学び、能動的な学び:アクティブラーニング」「社会問題や課題をシゴトと暮らしに取り入れる」をテーマに、都留文科大学様から貴重な機会をいただき、Think!2050の公開ワークショップを授業の一環として開催が実現しました。
今回のテーマは【教育のどっち?】です。
A案:今の教育カリキュラム
B案:コミュニティスクール(新しい教育カリキュラム)
2050年の社会では、どちらを選択したいか?
一番遠い未来(2050年)の“教育”の姿を想定しながら、未来の教育について合意を目指します。
“教育”のどっち? Think! 2050 in 都留文科大学会場の様子
当日は非常に多くの方々にお集まりいただきました。
今回参加できなかった方や今後取り組みが始まる主体的・対話的で深い学び/能動的な学び(アクティブラーニング)に取り組む学校関係者・企業の教育担当の方々へ当日の様子をお知らせするとともに、お越しいただいた方への感謝の気持ちを込めて、 開催の内容を抜粋してご紹介します。
当日のワークショップの流れを簡単にご紹介しながら、疑似体験できる記事になっていますので、ぜひ読みながら考えを深める機会になれば嬉しくおもいます。
なぜ、2050年を考えるの?
なぜ、今現在や直近の未来ではなく、一番遠い未来を考えることが必要なのでしょうか?
歴史を振り返るときには1年2年前を振り返ることはほとんどなく、軽く200年~300年は振り返って、「今とどう繋がっているか?」という視点で見ることが多いとおもいます。ですが「未来を見てみましょう!」と言った途端に1年2年後、長くても4年くらいまでしか見なくなりとても近視眼的で短くなってしまいます。
直近の未来を考えることも大事なことですが、ドラえもんや映画で見たことがあるような50年100年先の未来から逆算して「今やったことが未来にどう繋がるか?」という視点を持つことができると、今当たり前になっているような常識や前提・制約条件に囚われることが少なくなります。
今起きている事だけに左右されず「50年先はこういう未来になりそう!では逆算して、今現在何をすると善い?」というような大局的・俯瞰的な視点を持つことができれば、取れる選択肢が増えちょっとしたことで右往左往しない力強い選択ができます。
一番遠い未来から逆算する。抜けている部分を埋める、Think! 2050
2050年や2100年というと、わたしたち自身も生きているかわからないような未来ですが、自分たちの世代だけではなく、次の子ども達の世代やその次の孫の世代へどんな社会を渡せるか?という視点も大事にしたいポイントですね。
過去のThink! 2050では、どんなテーマで議論してきたの?
大学生のみなさんが社会に出て、会社やNPO/NGOなど色んな組織に所属して活躍すると思います。
今の世の中は資本主義が中心になっていて、儲かる/儲からないという判断が働く上では中心になってしまいがちですが、それだけだとどうしてもビジネスの外側については話をする機会が少なくなり視野がせまくなり勝ちです。
Think! 2050では、ビジネスの外側にある色んなテーマに焦点を当てながら、議論をして理解を深めてきました。
今まで議論したテーマ例
一例を挙げると、 ビジネスに近い「働き方・仕事」「国と通貨・企業と仮想通貨」「税」「資源」「原発・自然エネルギー」「戦争・テロ」などから、ビジネスとはちょっと遠い「結婚・恋愛」「暮らしとまちづくり」「移民」「医療」「社会保障」などなど、多様なテーマで社会を色んな角度から見ることで視野を広げ理解を深めてきました。
社会スキル全体から見た、マネジメント社の事業領域
なぜThink! 2050のような未来型のワークショップをやっているの?事業としてやっているの?他の事業とどう関係するの?など、マネジメント社によく質問いただく点について、スキルマップを元に自社紹介です!
期限内に目的へ導く、あらゆるサポートをするプロジェクトマネジメントの専門集団として事業運営するなかで、流行廃りに影響を受けにくく普遍的で100年後も必要とされる知見やスキルとして、3つのベーススキル(【人の自由】を実現するスキル:リベラルスキル)と1つのクリエイティブスキル(【人の自由】を描くスキル)の必要性に到達しました。
プロジェクトを失敗させない・成功の確率を上げるためには、この4つスキルが必要不可欠です。
同時に、気付いていないだけで普段の暮らしの中にもプロジェクトはたくさんあって、社会人だけではなく、専業主婦や高齢者の方、大学生だけでなく小学生も含め、誰でもこれらのスキルを持っていることで自分がやりたいことややるべきことを具体的に実現できるスキルと言えます。
このスキルを使える人が増えることを“シゴト”として、より多くの人たちに知ってもらい、使える人が増えた未来の姿を目指しています。
会社紹介ースキルマップから見た事業領域
- 構想|“ありたい姿”を描く技術(プロジェクトデザイン)
- 実践|期限内に問題解決する技術(プロジェクトマネジメント)
- 対人|合意する技術(ファシリテーション)
- 個人|受け取る・編集する・伝える技術(ロジカルシンキング)
考えることや合意することに技術はあるの?という疑問もあると思いますが、実際に存在します。
また、技術という表現から分かるとおり、練習すれば誰でも上達しますし、誰でもスキルとして獲得することができます。
時間の関係で全てお話しはできませんが、考える・合意するを始めとした技術の存在を知ってもらうことで、まずは技術について練習するきっかけにしてもらえれば嬉しく思います。
議論に入る準備として、ちょっとだけロジカルシンキングについて、問いの比較例で解説!
考える質と量を高めるには、“問い”の精度を上げることが避けて通れません。
実際にロジカルシンキングのワークショップで使用しているスライドを使って、勉強をテーマに“問い”と“答え”について解説します。
ロジカルシンキングを知る。“問い”と“答え”の比較例
「勉強」をテーマに、“問い”はいくつリストアップできるでしょうか?
例では、4つ提示していますが、考える技術が高くなれば問いは5分でも、20個くらいは簡単に洗い出すことができます。数が必ずしも重要ではありませんが、大事なことは“問い”の精度が低いと得られる“答え”の精度も低いということです。
- Q1.の答え例:はい、いいえ
- Q2.の答え例:国語、数学、理科、社会・・・
- Q3.の答え例:論文、微分積分、面接方法、英語力・・・
- Q4.の答え例:外国為替、国際会計、宗教・慣習、通関士・・・
上記はQ1~Q4の“問い”に対する“答え”ですが、“問い”の精度が高いと“答え”の精度も高いことに気付いていただけると思います。
ここまでの解説を踏まえて、今回のテーマ【教育】について、現役大学生のみなさんに実際に“問い”を洗い出してみましょう。
本日のテーマ:「教育」現役大学生のみなさんは、どんな“問い”がリストアップできるでしょうか?
[個人ワーク]教育について、まずは現役大学生のみなさんが、自分自身で“問い”をリストアップします。
本日のテーマ:教育
A案:今の教育カリキュラム
- まずは「型」を守る方が大切なのではないか?
- 教員免許を持って教育の知識を持っている者が教えることが大切ではないか?
- 指導する者が教育を学んでなければ、正しく教育ができないのではないか?
B案:コミュニティスクール(新しい教育カリキュラム)
- コミュニティスクールの方が個性を活かせるのではないか?
- 実践の社会で経験を得た人から学べるのではないか?
- 現状の教育制度の教育にプラスアルファの学びがあるのではないか?
などなど。上記は一部ですが、これらの“問い”を読んだ皆さんはどちらの立場に立って、どういう“問い”をリストアップできましたか?
“教育”のどっち? Think! 2050 in 都留文科大学会場の様子・議論の場面
次に、
[全体ワーク]リストアップができた“問い”を元に、自分がなぜその立場を選択したか、反対側の立場にはどういう問題・課題・リスクがありそうか?改めて、“問い”をリストアップします。
「A案:今の教育カリキュラム」派から「B案:コミュニティスクール」派への質問
- 相性の悪い人とも共同生活をすることに、学びがあるのではないか?
- 制度なき教育では、行き過ぎた指導は起こりえないか?
- 教育者が責任を持って教育をしていくには、担任制は必要なのではないか?
「B案:コミュニティスクール」派から「A案:今の教育カリキュラム」派への質問
- 学校に行かないと成り立たないものは何か?
- 友達を作ることや、人間関係を育むのは学校でしかできないことか?
- 学校を受験するときの5科目は本当に必要か?
上記の通り、リストアップされた“問い”を元に、反論・質問が飛び交いました。
この記事をご覧の皆様は「担任の先生は、そもそも必要なの?」など考えたことはありますか?もしくは「教育指導を学んできた先生方への信頼が必要ではないか?」について、しっかりと考えたことはあるでしょうか?
価値観の異なる参加者がリストアップした“問い”をベースとして意見交換をする場が、今まで自分では持っていなかった視点が得られ、それぞれの立場の考えが言語化してく様子を少しは感じ取っていただけるのではないでしょうか。
約2時間という中なので、全てを合意に導くことは難しいですが、少なくても考える価値がある“問い”は合意できたのではないでしょうか。
最後に、ファシリテーターから提示された“問い”とは?
そして最後に、ファシリテーター音羽から提示された“問い”は、
「そもそもわたしたちは、何のために“学ぶ”のでしょうか?」
教育を受ける理由ではなく、わたしたち自身が学ぶ理由です。
すぐに“答え”は出ない難しい“問い”ですが、みなさんが自分自身で考え続け、今日来ていない友人や両親と話してみて下さい。きっとこれから学ぶ上での指針になると思います。
そもそも、何のために“学ぶ”?
現役大学生のみなさんからの声:終了後アンケート(原文)
◆新しい気付きや考えが変わった・深まったポイントは何がありましたか?
- 「教育とは?」「資格とは?」について改めて考えるきっかけとなった
- 教育の内容が教科だけでなくルールや秩序も含むという点
- 逆算して考えること、普段当たり前と思っていることに疑問を持つ視点、ルールが多すぎること
- 担任について、必要だと思っていたが、地域によって考えるのはアリだと思った
- 担任の必要がないと考える人がいたということ
- 今の教育はあまり自由ではないのかもしれない
- 学校で教える5教科の必要性。「遊び」という科目にしたらいいのではないか
- 考えるとは、よりよい問いをつくることだというのがとても新しくかつ、納得出来るものでした!
- 教育とは何なのかという問いに対し、「自発的に教わり、育つ」という意見は個人的に新しい考え方でした
- 反対の意見を持った人とも、議論を深めていけば対立せずに分かりあえ、また合意できる新たな意見を生み出すことができるということ
- 問いを投げかけること
- 普段曖昧に物事を考えすぎていた
- 日本人が忘れがちな意見批判は人格批判ではない
- 担任の先生は必要なのかというのは自分は考えたことがなかった
- 未来に目を向けると新しい意見が出ると気づいた
- すべての仕事わ担任にさせる必要はない
- 問いの作り方や合意を目指す方法
- 担任はいるのかという問いは斬新だと思った
- 必要な教科について
- 自分の持つアイデアにこだわらず相手のアイデアも取り入れたらより良くなる
- 教育は地域や国によって誘導されるもの
◆今後、自分自身でより深く考えてみたい問い
- ルールを何処まで教えるか(ルール自体を考える機念も作るべきか)
- 教育は何のためにあるのか
- 自分が目指す教員の姿
- どの割合で今のカリキュラムとコミュニティースクールを合わせるか
- みんなで並んで同じことを学ぶことについて
- 教育と自由
- 5科目勉強する必要があるのか
- 日本の学校の校則は厳しすぎないか
- 単位制にするのはどうか
- 担任は必要か否か(より深く)
- どのような教育をすれば、よりよく子どもたちを成長させることができるか
- そもそも何のために学ぶのか
- 「いじめ」は教育現場において、あってはならないものなのかどうか
- 科目をなくすことは本当にできるのか
- 今の教育とはなにか
- なぜ学ぶのか
- 理想の小中学校とは
- 問いを立てる力の身につけ方
- 何を育てるために教育するのか
- 学びのために何が必要か
- 教育とは
- 今の教育はどうあるべきか
- 給食を通して食育は可能か
当日の様子を、山梨日日新聞さんに取材・掲載いただきました。
内容は実際の新聞記事、又は、電子版でご覧下さい。
http://www.sannichi.co.jp/article/2018/01/31/00248810
対話で合意形成めざす 都留文大教員志望の学生議論(山梨日日新聞 2017.1.31)
みなさまに御礼!
ご紹介したスライドやワークの内容は一部ですが、「教育とは何か?」「学びとは何か?」を初めとして、みなさまの発言を通じて考えるきっかけを提供できたようにおもいます。
また、貴重な機会を与えて下さった都留文科大学のみなさま、本当にありがとうございました!