「生産性」の意味を合意して狙いを定めれば、”生産性の向上”・”働き方の改革”の効果はより具体的に得られる。
前回の記事「“働き方の改革”や”生産性の向上”の方法で手を動かす前に、生産性をどう説明するか?を考える。」で、生産性を式に置き換えて、具体的に認識合わせができるように、それぞれの要素に分解しました。
合意した「生産性」の意味を踏まえて、今回の記事では生産性を高める方法を考えます。
問いにすると、
「少ない資源で、質の高い成果物の量を多く生み出す状態(生産性が高い状態、働き方が改革された状態)に到達するには、どのような選択肢があるか?」
になります。
同僚やマネージャーにこの質問を自分が聴かれる立場だったとしたなら、みなさんはどうお答えになるでしょうか?
記事を読み進む前に、一度、自分の答えを声にして発言してみるか、文章に書いてみてください。そのみなさん自身の答えとわたしたちが考えた結果を突き合わせ、より善い答えが見つかれば幸いです。
では、ここからは具体的に考えを進めます。
大きな方針としては、求めるアウトプットを変えるか?使用するインプットを変えるか?になります。
その二つの方針に、「減らす、更新する、増やす」という選択肢がそれぞれあります。
<目次>
1.アウトプットを変える
アウトプットを「減らす」 ※量
アウトプットを「入れ替える」 ※質
アウトプットを「増やす」 ※量
2.インプットを変える
インプットを「減らす」
インプットを「入れ替える」
インプットを「増やす」 ※生産性は下がるので注意
3.具体例 - 式を分解して課題を洗い出し、複数の課題をセットで対策する
4.まとめ
明日からやってみよう!
1.アウトプットを変える
ここでは考えやすいように、使用するインプット(少ない資源)を変えないことを前提に置いて、求めるアウトプット(質の高い成果物の量)のどこをどう変えるのが効果的か?について考えます。
通常は、インプットを変えることから考え始めることが多いかと思いますが、本質的には目的(アウトプット)を先に考えてから手段(インプット)という順番が生産性を高める上でも重要です。目的から考える習慣づけのためにも、アウトプットを変えることから考えます。
アウトプットを「減らす」
「減らす」とは、求める成果物を減らすことで、
使用するインプット(資源)が変わらなければ、求めるアウトプット(成果物)の量が少なくなるため生産性が上がります。
具体例としては、求められていない資料を減らす、品質に影響のない部品を減らす、主要ではない機能を減らすなど、アウトプットを減らすことです。
アウトプットを「入替える」
「入れ替える」とは、求める成果物を減らすことで、
使用するインプット(資源)が変わらなければ、求めるアウトプット(成果物)の質が高くなるため生産性が上がります。
具体例としては、プレゼンテーションのメインメッセージを入れ替える、わかりやすいデザインに入れ替える、ユーザーが触れる部分の使い勝手が良くなるように入れ替えるなど、アウトプットを入れ替えることです。
アウトプットを「増やす」
「増やす」とは、求める成果物を増やすことで、
使用するインプット(資源)が変わらなければ、求めるアウトプット(成果物)の量が多くなるため生産性が上がります。
具体例としては、根拠となるデータを分析した資料を増やす、オプションや交換用の部品を増やす、使い勝手が上がる機能を増やすなど、アウトプットを増やすことです。
2.インプットを変える
ここでも考えやすいように、求めるアウトプット(質の高い成果物の量)を変えないことを前提に置いて、使用するインプット(少ない資源)のどこをどう変えるのが効果的か?について考えます。
インプットを「減らす」
「減らす」とは、使用する資源(材料・技術・人手・時間)を減らすことで、
求めるアウトプット(成果物)の量と質が変わらなければ、インプット(資源)が少なくなるため生産性が上がります。
具体例としては、資料作成に影響のない情報(材料)を減らす、報告用のツール(技術)の利用を減らす、企画業務に使う時間を減らす、人手がダブついて空き時間が多い部署の人数を減らすなど、インプットを減らすことです。
インプットを「入替える」
「入れ替える」とは、使用する資源(材料・技術・人手・時間)を入れ替えることで、
求めるアウトプット(成果物)の量と質が変わらなければ、課題を解消できるインプット(資源)を入れ替えるため生産性が上がります。
具体例としては、製品の材料を木材から金属に入れ替える、旧式の機械を最新式(技術)に入れ替える、業務との相性が合う人と入れ替える、考える時間と手を動かす時間を朝夕で入れ替えるなど、インプットを入れ替えることです。
インプットを「増やす」 ※生産性は下がるので注意
「増やす」とは、使用する資源(材料・技術・人手・時間)を増やすことで、
求めるアウトプット(成果物)の量と質が変わらなければ、インプット(資源)が多くなるため生産性は下がります。
具体例としては、リサーチで新たなニーズ調査して情報(材料)を増やす、品質を担保するためテストツール(技術)を増やす、期限に間に合わないためメンバー(人材)を追加する、会話や会議でコミュニケーションの時間を増やすなど、インプットを増やすことです。
インプットを増やす場面は、リスクが顕在化したときや現在の延長では課題が解決しないタイミングです。
生産性を上げるためには、インプットを増やす・入れ替えるが基本。守るべき期限や品質がある場合は、生産性を犠牲にしても増やす判断をするということになります。
トラブル等で炎上するプロジェクトや定常業務を見ていると、いきなり「増やす」判断をしてしまいがちですが、削る・入れ替えるから取り組むことで生産性を犠牲にすることを防ぐことが出来ます。
3.具体例 - 式を分解して課題を洗い出し、複数の課題をセットで対策する
ある町工場で、主力製品の生産性を上げるために、生産性の式を元にどこを変えたら効果的か分解して考えてみることになりました。
生み出される製品(アウトプット:成果物)についてはそのままで、使用するインプット=資源(材料・技術・人手・時間)について検討します。
使用する資源のうち、材料には製品をつくるための原材料、製品をつくるための情報、技術とは製品を加工するために必要な研磨技術、研磨するためのマシン、道具、原材料を加工する人手、材料と技術を使う時間などが要素としてありそうです。
これらを1つ1つ検討していく中で、原材料の品質が悪い、従業員のスキルは高いが時間が足りない、従業員は足りているがスキルが不足している、マシンが旧式で時間がかかる、粗悪な製品が一定数出てしまう、生産性が低い原因を課題として洗い出します。
実際の現場では何か一つだけ課題を解決するよりも、複数の課題と対策を組み合わせて実施した方が効果的な場合が良くあります。
この町工場では、スキルアップ研修とマシンを入れ替えることを組み合わせ、生産にかかる時間と粗悪品を減らすことに成功。
結果、主力製品を1000個つくるにあたりの成果が1人10個からだった成果が1人20個までに増え、生産性が2倍になりました。
4.まとめ
- インプットを増やすことは生産性を下げることと直結する。減らす・入れ替えることを先に考える。
- 生産性を上げるには、アウトプットを先に考える。手を付けやすいインプットから手を出さない。
- 生産性を上げるには、式を分解してそれぞれどこを、どう変えたらより効果的かをセットで考える。
明日からやってみよう!
- 「少ない資源で、質の高い成果物の量を多く生み出す状態(生産性が高い状態、働き方が改革された状態)に到達するには、どういう方法がベストか?」をメンバーやマネージャーと話してみよう!