アクティブラーニングができている状況を作るには、どういう方法が効果的なの?|プロジェクトデザインの実践例
2020年から始まる新しい教育もくじ
「新学習指導要領(文科省)」を本格的に読み解き、プロジェクトデザインする!
(将来:“学ぶ方法”が変わる)
10年ぶりに文科省による学習指導要領がかわり「アクティブラーニング」という新しい学びが提示されていますが、未来の「しごと」や「はたらく姿」とつながっているでしょうか?
※「しごと」「はたらく姿」は労働や経済活動とは限らない。
変化の早い未来の「しごと」は、「労働」は、「はたらく」は、わたしたちとどう関係するのか?どう変わるのか?未来の私たちが、私たちの子どもたちがどんな「しごと」でどう「はたらく」のか、先入観を持たずに3つの記事を通して過去を歴史や背景を振り返りながら、ゼロから教育と学びについて考えてきました。
◎ 将来、人はできること・やりたいことで「はたらく」? ◎
従来の「はたらく姿」:直面した問題に対して、経済活動を土台としたモノ・仕組みによる解決がしごと。
将来の「はたらく姿」:大小あるコミュニティのありたい姿を描き、到達へ向けた問題解決がしごと。
◎ はたらく=本来の「やりたい」から増えた「できること」で、周りを楽にすること。 ◎
◎ 学び=学生→サポーター(教員含む)→専門家 ◎学びのゴール:得たい学びを選択できる、尊重された“はたらく個人”となり、社会へ参加すること。
学びの目的 :個人の尊重を目的とした、成熟した社会を実現すること。
学びの主体 :個人が主体となって、何(知識・技術 ※現行の教科を含む)を学ぶかを決める。
今回は、これまでの記事と未来の「はたらく姿」を想定しながら、「学ぶ方法が具体的にどう変わるか?」について、先入観を持たずにゼロから考えます。
目次
- 結論 「学ぶ方法」はどう変わる?
- 将来の学ぶ方法は、実プロジェクトで参加して学ぶ[活動型学習③④]と、その土台となる[個人学習①]・[対話型学習②]の三つの形になる。
- 方法① [個人学習] 自身の体験から発見した興味・関心を深めて学ぶ。
- 方法② [対話型学習] 他者の観点・選択肢と、共通の善い・合意へ導く対話の方法を学ぶ。
- 方法③ [参加|活動型学習] 誰かが始めている活動(プロジェクト)に、自分が“できること”で参加して学ぶ。
- 方法④ [企画|活動型学習] 自分で見つけた“やりたい”から、主体的に活動(プロジェクト)を企画・運営して学ぶ。
- 生きる力 - “ありたい姿”を“カタチ”にする4つの力(ラーニング・マップ)
- 想定される効果(学びから得られる) 自分の活動と社会をつくることの強いつながりを知る。
- “生きる力”から養われる“生き残る力”
- まとめ
- 次回予告 【具体化】「ゆとり教育」の導入から学ぶ、新しい「学び」をどうプロジェクトデザインするか? 等
【結論】「学ぶ方法」はどう変わる?
将来の学ぶ方法は、実プロジェクトで参加して学ぶ[活動型学習③④]と、その土台となる[個人学習①]・[対話型学習②]の三つの形になる。
※教科がきっかけ、覚えることを目的とした画一的な教育ではない。
① [ 個人学習 ]自身の日常の体験から発見した興味・関心を、自分の深めたい分野とつなげて自分のタイミングで学ぶ。※自分の興味・関心がない分野について、皆と同じタイミングで学ばない。
② [ 対話型学習 ]自身の興味・関心を元に、他者との対話を通じて、自分にはない観点や選択肢と共通の善いへ導く合意形成の対話方法を学び合う。
③ [ 参加|活動型学習 ]自身の興味・関心を元に、将来のはたらく姿を想定しながら、自分以外の誰かが企画した既に活動している実際のプロジェクトに能動的に参加して学び合う。
④ [ 企画|活動型学習 ]自身の興味・関心を元に、将来のはたらく姿を想定しながら、自ら(主体的に)企画を活動(プロジェクト)化して運営し学び合う。
上記のように、「学ぶ方法」は学びたい個人が主体となり、本来持っている興味・関心から、学びたい対象を取りに行く方法に変わります。
具体的には、子どもも大人も自分自身の内側にある興味・関心をスタートとして、学びたい対象を自分自身で選び、本や動画で知識を吸収しながら思考と感情と向き合い個人で学習する。個人学習で得たことを元に、自分以外の誰かに意見を聴く伝えるを繰り返しながら、思考と感情の広がりと深まりを対話から学習する。
個人学習と対話学習で得たことを元に、誰かが企画して既に始まっている活動(プロジェクト)へ自ら(能動的に)参加したり、自ら(主体的に)新たに企画して実際に活動(プロジェクト)化しゴールまで運営する経験から学習する。ゴールへ向かう活動の途中で、何度も問題や課題を発見したり解決するために意見を交換し、自分も嬉しい+相手も嬉しい共通の善いを探る合意形成というプロセスの経験が積みあがる。それらの活動と対話の経験から新しい興味・関心を発見し個人でまた学習する。その学ぶ循環が継続的に学ぶこと自体の愉しさを実感することにつながっていく。
学校で勉強して良い点数を取ったら終わりではなく、資格を取ってお金を稼ぎ貯金をしたら終わりでもなく、「やりたいこと」を「できること」にするために、子どもも大人も分け隔てなくみんなが望む社会を作る一人(社会人)として、一緒に学び続けることが学びの本質ではないでしょうか。そうして各個人が能動的・主体的に学びながら関わった活動とその活動の成果が、みんなが望む社会を一緒につくることと直接繋がっているのではないでしょうか。
そこまで学び合う形や場ができると、もはや肩書や年齢は関係ない本来の学びの姿と言えます。実はこれは単なる理想や夢物語ではなく、既に一部の場所で現実に実践されています。その具体例を少し解説を交えてご紹介します。
<幼稚園での例>
従来:覚える教育
・大人が滑り台の順番や並び方などのルールを考えて、大人が考えたルールを子どもは覚えて滑り台をすべる。
※考えるのは大人、覚えたルールに基づいて実践するのは子ども。
将来:考えて、学び合う
・子どもたち自身が滑り台の順番や並び方などのルールについて、自分の気持ちと相手の気持ちを考え話し合って決める。自分たちで決めた順番やルールに基づいて、自分たちでルールに変更を加えながら滑り台をすべる。子どもたちが決めるサポートをすることが、大人の役割。
※考えるのも子ども、考えたルールに基づいて実践するのも子ども。
大人は子どもが考えることを止めない(多数決や声の大きい人の意見だけが通らない)ように支援する。
【参考】
森のようちえん ピッコロ
こどもこそミライ -まだ見ぬ保育の世界-
<学校・会社での例>
従来:覚える教育
・自分以外の誰かに、決められた服を着て、決められた教室で、決められた方向を向いて、決められた教科の教育を繰り返し受ける。
将来:考えて、学び合う
・自分たちで、決めた服を来て、決めた場所で、決めた毎回新しい課題に取り組んで、新しい取り組みのために必要な専門知識を学ぶ。自分たちで決めるサポートをすることや専門知識や専門技術を持つ人とつなぐのが、大人や上司の役割。
【参考】
南アルプス小学校
シリーズ「未来の学校」第2回【前編】 きのくに子どもの村学園の『自由』な子どもたち
シリーズ「未来の学校」第2回【後編】 きのくに子どもの村学園の『自由』な子どもたち
覚えることと繰り返し作業が得意なAIやロボットは、わたしたち人間を労働から解放する役割を担います。人間が労働するために必要だった平均的な知識と画一的な教育は自然と必要なくなるということを意味していて、未来のやりたいしごと(労働とは限らない)に必要な専門知識や専門技術を会得することで、新しいしごとを作れる人に近づく第一歩になるのではないでしょうか。
生徒のためという想いが強くあったとしても、一人一人の教師が数多ある専門知識や専門技術を教えることは現実的に不可能です。従来の教師(Teacher)にとって重要な役割であった「教える」ことからも解放されると同時に、学びたい人(Learner)の「やりたいこと」を「できること」に変えるために、興味・関心の種を引き出しフタをしないように芽を育む手伝いをすることと、求めているタイミングで専門知識や専門技能を持つ専門家(Savant)につなぐ、新しい教師(Educator)の役割に変わります。
【教師の役割の変化】
従来の教える役割(Teacher)は、
1. 興味・関心の種にフタをしないように芽を育む手伝いと、
求めているタイミングでで専門家につなぐ支援者(Educator)
2. 専門知識・専門技術を持つ専門家(Savant)
の2つに分かれ、役割が変わる。
答えが決まった繰り返し作業を覚えるためや失敗をしないために教えてもらうではなく、答えがまだ見つかっていない初めて直面する問題の解決に向けて実際の活動(プロジェクト)に参加し、教える側・教えられる側を固定することなく活動を進める中での対話を通じて一緒に学び合う。
そういう学びを大人も子どもも一緒に始める時期が既に来ています。