“働き方の改革”や”生産性の向上”の方法で手を動かす前に、生産性をどう説明するか?を考える。
大手広告代理店の長時間労働による事件が報道されて以降、ニュースや記事などで「残業禁止」「ノー残業デー」「プレミアムフライデー」「働き方改革」「生産性向上」「業務改善」といったキーワードをしきりに目にするようになりましたが、みなさんの職場ではどれくらい話題になっていますか?
すぐに始めやすい取り組みやルールの導入として「残業禁止、18時以降は消灯!」「全員、一斉に帰宅!」という帰宅時間だけを改善する動きはありますが、実際には時間内に仕事が終わらず家に持ち帰って仕事をしていたり、持ち帰っての仕事が残業として認められずサービス残業が増えているという声はよく聴こえてきますが、何からどういう順番で考えれば良いのでしょうか?
今回は、働き方の改革や生産性の向上についての方法を考える前に、まずは共通の理解が必要な「生産性をどう説明すると納得感があるか?(定義)」について、いつもより深く考えることからはじめ、言葉の意味としての「生産性」を探ります。
読み進む前に、
「生産性とは何か?」を同僚やマネージャーに自分が質問されたとしたなら、みなさんはどうお答えになるでしょうか?
一度、自分の答えを声にして発言してみるか、文章に書いてみてください。そのみなさん自身の答えと私たちが考えた結果を突き合わせていただいて、ご意見やご質問をいただくなかで、より善い答えが見つかれば幸いです。
<目次>
1.生産性とは「アウトプット」を、「インプット」で得られる割合
2.生産性の式にあるアウトプットとインプットをさらに分解する
出力:アウトプット=成果物≠売上
入力:インプット =資源
3.生産性とは「アウトプット」を、「インプット」で得られる割合(詳細版)
付加価値やクリエイティビティは、生産性とどう関係する?
4.まとめ
明日からやってみよう!
1.生産性とは「アウトプット」を、「インプット」で得られる割合
生産性を上げるには、業務プロセスを改善をする、人員を教育・追加する、機械の導入をするといった手段が考えられますが、では「生産性」とはそもそも一体何でしょうか。言葉の意味が合意できるように説明するとなると、どういう説明だと伝わりやすいでしょうか。
いきなり結論の提示になりますが、
生産性とは「アウトプット」を、「インプット」で得られる割合
と考えています。
式にすると、
生産性の式:『生産性(%)=出力:アウトプット ÷ 入力:インプット』
になります。
この式から導き出された割合が大きければ生産性が高い状態で、つまり「少ない人手でたくさんのアウトプットが生産ができた(1人当たりの生産数)」、「短時間でたくさんのアウトプットができた(時間当たりの生産数)」などの状態です。
逆に、小さければ生産性が低い状態で、「たくさんの情報を集めたけど、質の高いアウトプットが少ない」、「たくさん集めた材料から、アウトプットは少ししか作れなかった」などの状態です。
2.生産性の式にあるアウトプットとインプットをさらに分解する
次に、上記で示した生産性を表す式をさらに分解し、アウトプットとインプットが具体的にどういう要素で構成されているかを深めます。
出力:アウトプット=成果物≠売上
アウトプットは、成果物です。
成果には、タスクの実施によってできあがった資料や製品などの成果物、販売活動や営業活動から得られた情報(活動は、作業日報・営業日報などの成果物に転換される)などの成果物があります。
【成果物と成果は、似ていても全く別?】
成果物はタスクを実行したことを証明する実際のモノですが、成果は目標に対する達成度(指標)です。
例えば、
今日一日で100社に電話をかける(=目標)。
87社に電話をかけた(=成果)。
電話をかけて得られた反応の結果を一覧として資料化する(=成果物)。
という違いになります。
【成果物≠売上?】
売上は成果物ではなく、成果(目標に対する達成度)です。
特に賛否が分かれる可能性はありますが、成果物を元に売上を式にすると、
売上 = 成果物 × その時代の市場との相性(%)
と考えています。
成果物の品質がどんなに素晴らしくても、その時代の相性と合わなければ80%の価格でしか売れなかったり在庫が余りますが、その時代の市場と相性が合えば200%の価格でもすべて売り切れることができます。
とはいえ、一つの指標である金額に換算して、全体の状況を把握したり比較検討できることは、とても魅力的です。
同じ組織の中でも、個々の成果物がそれぞれの部署の活動で違ったり、生産しているモノが違ったり、指標を統一して単純化し一カ月や一年の労働生産性を比較できることは課題の把握に繋がります。
例として、よく用いられる指標として、ドル換算の一人当たりの労働生産性の国際比較があります。
http://www.jpc-net.jp/intl_comparison/
※2016年度版より抜粋
OECDデータに基づく2015年の日本の時間当たり労働生産性は、42.1ドル(4,439円)。米国の6割強の水準で、順位はOECD加盟35カ国中20位だった。1人当たり労働生産性は、74,315ドル(783万円)、OECD加盟35カ国中22位となっている。
売上は、成果物ではなく、その時代の市場の影響を受ける成果測定の指標(=成果)のため、マクロ的な視点で全体を比較検討するには重宝しますが、あくまで参考指標です。
指標ではなく、純粋な生産性を考えうる上では、成果物(得られた顧客リスト、ヒアリングで得られた課題一覧、提案の経験数 etc)で考えます。
入力:インプット=資源
インプットは、資源です。
資源には、成果物をつくるための材料や技術、人手と時間です。材料はパソコンや印刷する紙やインク、道具や部品、食材や熱などですね。
技術は、パソコンの操作技術やモノの組み立て技術、シェフの調理技術など人に紐づいた技術と、自動化・効率化・高速化など人間では難しいことを可能にする機械やコンピューターの技術(テクノロジーと言われることが多い)などがあります。
材料と必要な技術を元に、人材と人数が人手、その人手が必要とする時間が資源の全体像となります。
【お金は、資源に含まれない?】
資源を分解して考えてきましたが、お金はそれらの資源を調達しやすくするための便利な手段の一つです。
お金が足りない場合でも、材料を分けてもらう、手や知恵を貸してもらう、時間を待って猶予をもらうなど普段の生活でも自然と工夫をしていることはあると思います。
お金は資源を調達しやすくするための手段なので、お金が足りないからできないという単純な結論に陥らないように、どの資源がどれくらい必要かを考えるために、お金は分けて考えましょう。
余談にはなりますが、お金には、成果物を作るためや日々の定常的な活動を維持するためのお金(=費用)と、新しい挑戦に使う将来へのお金(=投資)があります。
3.生産性とは「アウトプット」を、「インプット」で得られる割合(詳細版)
生産性の式:『生産性(%)=出力:アウトプット ÷ 入力:インプット』
↓
生産性の式:『生産性(%)=出力:アウトプット(成果物) ÷ 入力:インプット(材料+技術+人手+時間)』
付加価値やクリエイティビティは、生産性とどう関係する?
生産性とは何か?という問いに対して別の答えとして、付加価値やクリエイティビティがよくあります。
式を、成果物と付加価値やクリエイティビティはどういう関係でしょうか?
付加価値は、成果物に質か量でなんらかプラスマイナスがある(※生産性とは別)ということで説明ができそうです。
例えば、
資料が成果物の場合、数枚追加資料を付け加える(付加価値)、インフォグラフィックなどの絵に置き換えて表現する(クリエイティビティ)。
料理が成果物の場合、普段のコースでは提供しない追加のソースを選択できる、シェフの気まぐれサラダの盛り付けをひまわりの絵にする(クリエイティビティ)。
上記のような現実の例を考えると、成果物をベースに、付加価値やクリエイティビティがプラスマイナスされている関係が分かりやすいと思います。本来は付加価値やクリエイティビティという言葉の意味も明らかにすることが望ましいですがみなさんも考えてみてください。
4.まとめ
- 「働き方の改革」「生産性の向上」の前に、まずは生産性という言葉の意味を明らかにして、関係するメンバーと合意する。
- 生産性とは 「アウトプット(成果、売上)」を「インプット(資源)」の式で得られる割合をいう。
- お金と資源とを切り分けて考える。
明日からやってみよう!
- 「生産性ってどう説明する?」をメンバーやマネージャーと話してみよう!