ファシリテーションワークショップを2016年3月に茅場町で開催しました
2016年3月16日(水)に、コワーキングスペース茅場町 Co-Edoで「論点のズレを軌道修正できる!合意形成の腕がメキメキ上がるファシリテーションワークショップ」を開催しました。
解説と模擬会議の実践でファシリテーションの技術を学んでいただいた3時間のワークショップ。
印象的だったポイントを写真とともにレポートします。
「なんで集まったんだっけ?」という会議をなくしたい
はじめに参加者のみなさんの自己紹介と、このワークショップに参加したきっかけを話していただきました。
「これなんで集まったんだっけ? という会議がたくさんある」
「1人だけが喋って、残りの全員がずっとだまっているような会議がある」
「会議でなかなかものが決まらない」
とそれぞれに会議に関する課題があがりましたが、みなさんに共通していたのは「会議をもっと良いものに変えたい」「もっと良い会議にするための技術を知りたい」という意識。
ここでは講師の音羽から、「ファシリテーションは、会議でファシリテーターをする人だけがわかっていればいいものではない。会議の参加者がうまく議論に介入できれば、何も決まらずに会議が終わるようなことはなくなります」というメッセージをお伝えしました。
みなさんの課題を共有したところで、合意形成の腕がメキメキ上がるファシリテーション技術の解説とグループワークに入ります!
ファシリテーションには「良い問い」が欠かせない
合意形成を引き出すためにファシリテーターがまず心がけるべきなのは、より良い問いを作ることです。
ファシリテーターが「良い問い」を投げかけることができれば、参加者からより多くの「良い答え」を得ることができ、そこから「最良の答え」を選んで合意形成することができるからです。
会議中はもちろん、会議の議題を立てる時にも「問い」を意識することは有効です。
「○○について」という議題よりも「○○は××か?」という問いの形で議題を立てた方が、論点を明確することができますよ。
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「良い問い」が実感できたグループワーク
1回目のグループワークでは「このワークショップの参加メンバーで一緒に何かをする(打ち上げ、懇親会、旅行etc.)」というお題で、ひとり1テーマずつ選び、ファシリテーターとして合意形成を実践してもらいました。
ファシリテーターは、みんなの意見がバラバラな時は意見を絞り、逆に意見が全然出ない時は良い問いを投げかけて意見を引き出す、という技術が求められます。
苦戦する方も多い中、ある一つの「良い問い」をきっかけに一気に合意形成が導かれる場面がありました。
それは「みんなで同じ趣味を持つなら何か?」というテーマで話していた時のこと。
「みなさんの普段の趣味は何ですか?」というファシリテーターの問いに、ある参加者から「能面を彫ること」と予想外の答えが。
ここで他の参加者も「能面って自分で彫れるんですか?」「どこで彫れるんですか?」と盛り上がり、「じゃあみんなで浅草に能面を彫りに行きましょう!」とすんなり合意形成できたのです。
「良い問いが合意形成を導く」ことが実感できた瞬間でした……!
「ネガティブな問い」に聞こえないよう気をつける
グループワークが終わると、講師からのフィードバックタイム。
みなさんから「なるほど!」と納得の声があがったフィードバックの一つが、「問いを投げる時は、ネガティブな聞き方をしないように気を付ける」というもの。
たくさんのアイデアからひとつに絞りたい時、つい「今出ているアイデアの中で、ナシだと思うものはどれですか?」といった問いかけをしてしまいがちですが、この聞き方では「ナシ」なアイデアを出した本人が「ナシって言われた=批判された」と感じてしまう可能性があります。
こういう時はできるだけポジティブに「今出ている意見の中で、一番いいと思うものはどれですか?」といった聞き方でアイデアを絞り込んだ方が、気持ちよくスムーズな合意形成につながりそうですね。
より良い会議のためにできることを考える
2回めのグループワークは、「より良い会議のためにできることを考える」というテーマで、各自が話したいと思う「問い」を投げかける形式。
会議の準備に必要なことは、根回しとは、会議中に困ったらどうするべきか、会議の参加メンバーは、会議室の内装と備品は……と多岐に渡る問いが飛び交い、ファシリテーションの訓練ができたと同時に、参加者間で会議のコツが共有される濃い時間となりました。
質疑応答
質疑応答の時間では、ファシリテーションを実践して難しいと感じた点や普段の会議でつまづいていることについて、多くの質問が挙げられました。
Q.ワーク中、最初に用意した問いにこだわりすぎて、合意形成への道のりが遠くなってしまった。問いを投げかける順番にコツはあるか?
まず、問いを準備する時には、どんな順番で投げかけるかまで考えておく。
議論の流れによって、問いを「1.用意した順番のままに投げかける」方法と、「2.出てきた答えに合わせて順番を変える」方法の2つがある。
問いから得られた「答え」をもとに、関連する問いを投げかけられると、合意形成までの流れが作りやすい。
Q.大人数の会議では、意見が全く出なかったり、逆に議論が発散してまとまらないことが多い。うまく合意形成するコツはあるか?
人数が多い場合は、ファシリテーター自身が議論の流れをシミュレーションして、答えの仮説を持っておくことが重要。
ファシリテーター自身が議題について一番考えている状態にしておけば、何も答えが出ないまま時間が過ぎることを防げるし、想定外の方向に議論が流れても慌てずに軌道修正できる。
ただし、ファシリテーターの仮説に議論を引っ張らないよう注意が必要。
用意していた仮説よりも良い答えが参加者から出たら、それを選択すればよい。
Q.どちらの選択肢も甲乙つけがたく、どうしても決められない時はどうすればよいか?
決めるために必要な判断軸が出揃っているか、漏れていないかを確認する。
漏れている判断軸があれば、それを元に選択してみる。
それでも甲乙つけがたい時は、今考えていることの外側に目を向けて、「社会的に意義が大きいのはどちらか?」など、より大きな判断軸で考えてみる。
Q.ファシリテーターは「できる人感」を出して会議をビシッと仕切った方がよいのか?
無理に仕切ろうとしなくてもよい。その人のキャラクターによる。
ファシリテーターは議論の中の重要なポイントで良い問いが投げられれば、参加者から価値を感じてもらうことができる。
たったひとつの良い問いから、会議の流れをコントロールできることもある。
Q.経営者の「鶴の一声」で決まったことに、現場のメンバーから反発が出てうまく進まないことがある。どうすればよいか?
声を聞く順番が大切。
経営者の声を聞く前に現場のメンバーから複数の意見を引き出し、その中から経営者が納得できるものを選んでもらう。
そうすると、決め方が同じ「鶴の一声」でも、双方納得感が得られる。
Q.どうしても合意形成できない時は、多数決で決めてもよいか?
重要でないことは多数決で決めてもよいが、ここだけは合意形成が必要、というポイントは外さない方がよい。
重要なことほど、後から「あの結論にはやっぱり納得できない」と言われた時にぶり返しが大きいため。
重要でないことは、時間をかけて話し合うよりも、多数決ですぐに決めてしまった方がよい場合もある。
おまけ:蛍光灯カバーのひみつ
ところで、会場のコワーキングスペース茅場町 Co-Edoの蛍光灯にはこんなカバーが付いています。
これは、モニターに蛍光灯の光が映り込まないように後から取り付けたものなのだそう。
一見なんてことないように見える工夫ですが、せっかくなのでファシリテーターの視点で「問い」と「答え」を整理すると
- 問い:蛍光灯の光がモニターに映り込むのを防ぐには、どうすればよいか?
- 答え:カバーをつける
ということですね。
ナイスな答え(解決策)のおかげで、ワークショップ中もモニターはくっきり見えておりましたよ!
参加者の声
ワークショップの最後には、参加者全員で自分や他人のファシリテーションを振り返りました。
みなさんから挙がった「よかった点」「改善したい点」の一部をご紹介します。
よかった点
- ファシリテーターの質問が端的だと答えやすかった
- 議論の中で出てきた答えに沿って、ファシリテーターが新たな問いを出すことができた
- どんな答えもまずは受容すること、否定しないことが大事だとわかった
改善したい点
- 今どんな答え(意見)が出ているのか、ファシリテーターが整理して共有できるとよかった
- ファシリテーターが出てきた意見に引っ張られて、もともと用意していた問いと全く違う問いばかりを投げかけてしまった
- ファシリテーターが問いを整理できていないと、答えづらかった(問いに前提が入って長文になってしまったり、ひとつの問いに複数の質問を入れてしまったり)
社会人は毎日のように行っている会議ですが、その内容について客観的に振り返る機会はなかなかありません。
ワークショップでファシリテーションの基本を理解し、実践し、振り返ってみることで、普段の会議で心がけるべきポイントも見えてくるのではないかと思います。
株式会社マネジメントでは今後も定期的にファシリテーションワークショップを開催予定ですので、ファシリテーション技術を学びたい方、自分のファシリテーションを見つめ直してみたい方はぜひ参加してみてくださいね。
ワークショップ開催のご案内はFacebookページでいち早くお知らせいたします。