課題を合意しないと何が起きるんだろう? ~課題管理のプロセス その3~
以前の記事では課題管理のひとつめのプロセス「課題の発見」と、ふたつめのプロセス「課題の見える化」についてお話ししました。
これで、発見した課題をオープンにして見落としを無くし、全体把握をすることができました。
今回は、次のプロセスについてお話ししていこうと思います。
複数の人が協力して課題解決する場合、どんなことが問題になると考えられるでしょう。
たとえば、人によって「課題」だと思っていることが違う、ということはないでしょうか。
二人の「課題」は同じもの?
身近な例を挙げてみましょう。
ある夫婦が新婚旅行にでかけました。
夫の両親や妻の両親をはじめお世話になった親戚、休暇中の仕事を代わってくれた職場の同僚たちへおみやげを買おうと旅先の売店に立ち寄りましたが、そこで夫婦は「おみやげが決まらなくて困ったなぁ」と頭をかかえてしまいました。
ところが、夫が「困った」と思っていることと妻が「困った」と思っていることは、どうやら内容が少し異なるようです。
<夫の課題>
- おみやげを渡す人数が把握できておらず、おみやげをいくつ買えばよいのかわからない
<妻の課題>
- おみやげを誰にいくつ買うかは決まっているが、おみやげの品物を何にするかが決まらない
夫はそもそも誰におみやげを渡すのかが決まっておらず、妻はおみやげの中身が決まらない。
一見同じことに悩んでいるように見えても、その内容は異なるものでした。
このままでは
妻「このおみやげ、○○おじさんにあげようと思うんだけど、どう思う?」
夫「え!? ○○おじさんにもおみやげ買うなんて考えてなかったよ!」
……といった具合で議論のすれ違いが起こってしまい、話がこじれることが目に見えるようですね。
こういった認識のズレは、日常生活の中でも、ビジネスの現場でもよくみられるように思います。
では、一体どうすればよいのでしょうか。
課題の内容について、認識を合わせる
この場合、お互いが何を「課題」だととらえているのか、認識を合意する必要がありそうです。
先ほど挙げたそれぞれの課題を、もう少し細かくして書き出してみましょう。
<夫の課題>
- おみやげを渡す人数が把握できていない
- おみやげに何をいくつ買えばよいのかわからない
<妻の課題>
- おみやげの品物を何にするかが決まらない
夫は、おみやげを渡す人数もいくつ買うのかも、まったくのノープランであると思い込んでいましたが、妻の話を聞いて、おみやげを渡す親戚の人数はすでに決まっていることがわかりました。
一方で妻は、おみやげを渡す人数はすべて決まっていると思い込んでいましたが、夫の話を聞いて、職場に持っていくおみやげは何人分買えばよいのかが実は不明確であることがわかりました。
お互いに抱える「課題だと感じていること」の中身を明らかにすることで、「おみやげが決まらない」」という課題は以下のような内容であることがわかったのです。
<夫婦の課題>
- おみやげを渡す親戚の人数は決まっているが、品物が決まっていない
- 職場でおみやげを渡す人数と品物が決まっていない
これらの課題に対して、二人の考えた解決策は以下の通りです。
<夫婦の課題解決策>
- 親戚に渡すおみやげの品物を決める
- 職場でおみやげを渡す人数を決める
- 職場に渡すおみやげの品物を決める
こうして、二人は課題の内容について同じ認識を持つことができました。
さっそく解決にとりかかろうとしましたが、妻は「じゃあまずは、親戚に渡すおみやげの品物を決めましょう」と言い、夫は「いやいや、僕の職場でおみやげを渡す人数を決めるのが先だよ」と言い、意見が割れてしまいました。
これではまた話がこじれてしまいますね。
さあ、どうすればよいのでしょうか?
優先順位を合意する
複数の人がひとつの課題に取り組むためには、課題についての認識を合わせることが必要です。
認識を合わせるポイントは二つあります。
どんなことが課題なのか、という「課題の内容」と、そしてもう一つ、どの課題から解決するべきか、という「課題の優先順位」です。
夫婦の例に戻りましょう。
二人は、複数の課題のうち、どちらを先に解決した方がいいか話し合いました。
その結果、「まずおみやげを渡す人数をすべて把握してから、おみやげ屋に行って全員分の品物を決めた方が効率がいいね」ということに話がまとまり、解決策に以下の優先順位をつけました。
<優先順位 高>
- 職場でおみやげを渡す人数を決める
<優先順位 中>
- 親戚に渡すおみやげの品物を決める
- 職場に渡すおみやげの品物を決める
こうして課題の内容と優先順位を合意したことで、二人は順調におみやげを選ぶことができ、無事に楽しい新婚旅行を終えることができました。
どうして「課題の合意」が必要なのか
今回は日常生活での出来事を例に挙げましたが、ビジネスシーンでの課題管理においてももちろん、同じプロセスが欠かせないと考えています。
チームで仕事をこなすビジネスの現場では、どんなことが課題なのか、どの課題の優先順位が高いのか、全員が同じ認識を持っていないと、解決の方向がバラバラになりチームとしてまとまって仕事をすることが困難になってしまいますね。
そもそも、何のための解決策なのかわからずに取り組むのと、しっかり理解してから取り組むのとでは、質も効率も違ってくるのではないでしょうか。
「課題の合意」は、課題に取り組む全員が同じゴールに向かって進むため、欠かせないプロセスだと言えるでしょう。
さて、課題管理の4つめのプロセスは「課題のタスク化」、最後のプロセスは「課題の状態把握」です。
こちらはまた別の記事でお話ししますね。
まとめ
課題の共有とは、課題について関係者全員が共通認識をもつこと、優先順位の合意をすることである。