”ありたい姿”の描き方 中編 ~より善いコンセプトデザインの手順(1ー4/7)~
プロジェクト立ち上げる「目的」を、自信を持って設定できていますか?
3回に分けてお届けしている、
『“ありたい姿”の描き方』ですが、前回では目的設定の準備となる
・なぜ、“ありたい姿“を描くのか?
・そもそも,、“ありたい姿“とは何か?
・“ありたい姿”と、“あるべき姿”は何が違うか?
について考えを深め、解説しました。
中編では、実際に“ありたい姿”を描く手順についてご紹介します。
“ありたい姿”を設定する手順
一つ一つ丁寧に進めると、手順として7つのステップがあります。
手順に入る前の準備として、ゼロベースで考えるためにすべての制約・前提を外すことを忘れないでください。ゼロベースで考えることは、現状の人、モノ、金、時間、情報は自分でコントロールできるものと仮定し、実際にできる・できないは考えません。
コツは、100年先、50年先というすぐには想像がつかない未来(少なくとも10年先、15年先)から逆算して考えることです。
今直面している現実をスタートとして1年後、2年後、3年後と現在から積み上げて考えてしまうと、無意識に自分の中で制約・前提を設けてしまうので注意が必要です。
では、一つ一つ順番に考えていきましょう。
<目次>
1.“ありたい姿”を描く対象は何か?
→対象の焦点を定める。
2.”ありたい姿”の対象に近い誰か?
→“ありたい姿”を仮置きする。
3.対象を取り巻く外部環境がどう変わり、”ありたい姿”がどう影響を受けるか?
→変化する可能性が高い外部環境と、受ける影響を洗い出す。
4.ありたい姿に到達するために、従うべき原理・原則は何か?
→従うべき原理・原則を設定する。
5.現状と、”ありたい姿”の差(問題)は何か?
→解決すべき問題を特定する。
6.(3.)~(5.)を踏まえて、仮置きした対象(2.)の何を変えるか?
→自分ができること・やりたいこと・求められていることを元に調整する。
7.(1.)~(6.)を3回以上繰り返し、”ありたい姿”の精度を高める。
1.”ありたい姿”を描く対象は何か?
→対象の焦点を定める。
ゼロベースで考える準備が整ったら、まず最初に“ありたい姿”を描く対象を決めます。
個人が描く対象の例として、「経営者」、「営業マン」、「音楽家」、「旅人」などが挙げられます。また、組織が描く対象の例としては、「地域コミュニティ」、「会社・NPOなどの法人」、「自治体」などが挙げられます。
対象を一つに絞る必要はありませんが、大小がありますので、可能であれば親子関係を意識しましょう。
前編の大谷選手であれば、親が「野球選手」とすると、子が「ピッチャー」・「身体」・「メンタル」になりますし、 組織の場合は、大が「法人」とすると、小が「提供したい商品やサービスの価値」・「人材」・「磨きたい技術やスキル」になります。
2.”ありたい姿”の対象に近い誰か?
→“ありたい姿”を仮置きする。
“ありたい姿”を描く対象を決めたら、次はその対象の”ありたい姿”に近い誰か?から、自分が望む“ありたい姿”を仮置きします。
個人でいえば、経営者の○○さんみたいになりたい、音楽家の○○さんみたいになりたい、夫婦で世界旅行している人みたいになりたい、というように映像でイメージできるような存在を探し、仮置きします。
組織も同様ですが(1.)で例にしたように親子関係を意識すると具体的になります。
提供する商品やサービスの価値はユニリーバみたいになりたい、人材はWWFみたいになりたい、磨きたい技術やスキルは国境なき記者団みたいになりたい、というように対象に合わせてベンチマークとなる存在を仮置きするイメージです。 具体的に実在する人・組織をイメージして参照することで、“ありたい姿”の輪郭が明らかになります。
注意点として、簡単にイメージしやすいように、“ありたい姿”に近い存在は誰か?を参照して仮置きしていますが、あくまで仮りで、個性も環境も時代も置かれている状況が全く異なりますので、全く同じになりたいと考えないようにしてください。
3.対象を取り巻く外部環境がどう変わり、”ありたい姿”がどう影響を受けるか?
→変化する可能性が高い外部環境と、受ける影響を洗い出す。
対象と近い存在をイメージできたら、その対象を取り巻く外側の外部環境に目を向けて、外部環境がどう変わり、”ありたい姿”にどう影響するか?を考えることで、”ありたい姿”を俯瞰的・客観的に見ることと、ぐっと視野を広げて見られることで、自身が求める”ありたい姿”に近づくことを目指します。
前編で、“ありたい姿”を設定するコツとして100年先、50年先から逆算するというお話をしましたが、外部環境においても同様で、50年先の政治、経済、社会、技術(PEST分析 ※他の方法でも良い)の4つの観点がどう変わるか、”ありたい姿”がどう影響を受けるかに仮説を置きながら洗い出します。
P:政治的な側面 でどう変わるか?どう影響を受けるか?
E:経済的な側面 でどう変わるか?どう影響を受けるか?
S:社会的な側面 でどう変わるか?どう影響を受けるか?
T:技術的な側面 でどう変わるか?どう影響を受けるか?
E::環境的な側面(を別に切り出すときもあります)でどう変わるか?どう影響を受けるか?
具体的には、自分が勤める会社の関係する業界ではどのような法律が施行されるか(政治的側面)、日本だけでなくアジア圏ではどの業界が成長しているか(経済的側面)、業界と直接・間接的につながる大きな社会問題の発生や改善が予想される社会問題はあるか(社会的な側面)、業界にインパクトを与えるIT・AI・ロボットを含めた機械・遺伝子操作や科学の分野ではどのような技術が開発されているか(技術的側面)、などが挙げられます。
もう少し身近な例で、前編の日ハムの大谷選手で考えてみると、大リーグに挑戦するためのルールが厳しくなるか緩やかになるか(政治的側面)、海外の野球人気も含めプロの野球リーグ全体を取り巻く経済状況は良くなるか悪くなるか(経済的側面)、高齢化する社会で地域とリーグや各チームはどういう役割が求められるか(社会的側面)、機械化やデータ化の延長にある野球の技術はどこまで発展するか(技術的側面)などの外部環境の起きうる変化と、受ける影響の仮説を洗い出します。
4.ありたい姿に到達するために、従うべき原理・原則は何か?
→従うべき原理・原則を設定する。
個人も、個人の集合体である組織も、人間である以上想定とは違った事態に陥り、一時的に失敗といえるような事態を引き起こしてしたり事故に巻き込まれてしまうことがあります。失敗は悪いことではありませんが、失敗によって致命的・再起不能なダメージを受けないよう、ダメージを受けても最小限に留められるよう、従うべき原理(譲れない判断基準の第一となる考え)と原則(原理に基づく言動を促進・制限するルール)を設定します。
法人でいえば理念や行動基準、ブランドアイデンティティやブランドガイドラインに当たるもの、個人なら、悪口を言わない、人を助ける、立場の弱い人の力になりたいなど、自分が従いたい哲学が該当します。また少し大きな視点で言えば、国の憲法や法律が該当します。
原理・原則という言葉の意味を正確に把握することは難しいかもしれませんが、原理も原則も自分で選択して設定する、自分が従うべき指針であるという点だけでも押さえおいてください。
※余談ですが、近しい言葉で法則がありますが、法則は観測して導き出される一定条件下では成立する関係で、自分で選択して設定できない、一定条件下では従わざるを得ない条件です。
原理-譲れない判断基準となる第一の考え
【Wikipediaより:原理の説明】そこから他のものが導き出され規定される始原。他を必要とせず、なおかつ他が必要とする第一のものである。
原則-原理に基づく言動を促進・制限するルール
【コトバンクより:原則の説明】多くの場合に共通に適用される基本的なきまり。
5.現状と、”ありたい姿”の差(問題)は何か?
→解決すべき問題を特定する。
6.(3.)~(5.)を踏まえて、仮置きした対象(2.)の何を変えるか?
→自分ができること・やりたいこと・求められていることを元に調整する。
7).(1)~(6)を3回以上繰り返し、”ありたい姿”の精度を高める。
まとめ
- 対象の焦点を定める。複数でも良いが、対象の大小。親子関係を意識する。
- “ありたい姿”を仮置きする。全く同じになるとことではなく、あくまで参考としての仮置き。
- 変化する可能性が高い外部環境と”ありたい姿”が受ける影響を洗い出す。外部環境も100年後・50年後の未来から逆算する。
- 従うべき原理・原則を設定する。原理と原則は、ブレない発言や行動を支える指針になる。
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