「問い」をうまく使いこなそう ~「問い」から「答え」を引き出す編~
「考える」ってなんだろう?の記事では、「考える」とは「求める答えを引き出すための、最良の“問い”を作ることである」とお伝えしました。
今回は「問い」がどんな時に使えるのか、そのメリットをご紹介します。
「問い」と「答え」は1:n(ひとつ:複数)の関係
「問い」と「答え」の関係を図にすると、以下のようになります。
どんな時も「ひとつの問い」に対して「複数(ひとつ以上)の答え」がある、という関係は変わりません。
たとえば、「おなかがすいていますか?」という単純な問いを想像してみてください。
こんな単純な問いにも「はい」または「いいえ」という2通りの答えが考えられますよね。
あるいは「何が食べたいですか?」という問いに対する答えはどうでしょうか。
「ハンバーグ」「ラーメン」「ビールに合うもの」「○○洋菓子店のケーキ」など、人によって異なる無数の答えが考えられますね。
このように「問い:答え=1:n」という関係を意識することが、「問い」を使いこなす第一歩です。
この関係に照らし合わせると、「問い」が役に立つ場面は大きく分けて2つあります。
- ひとつの「問い」から、複数の「答え」を引き出す
- 複数の「答え」から、ひとつの「問い」に立ち戻る
今回は、1.ひとつの「問い」から、複数の「答え」を引き出す場面について、詳しくご紹介します。
1.ひとつの「問い」から、複数の「答え」を引き出す
「問い:答え=1:n」なので、必ず「問い」よりも「答え」の方が数が多いと言えますね。
つまり、「問い」を考えずに「答え」から入ってしまうと、無意識に選択肢を狭めることになってしまうのです。
できるだけ選択肢を広げたい時には、「問い」を意識して、たくさんの「答え」を引き出すことが有効です。
具体的には、こんな時に使うことができます。
1-1.人にアドバイスする時
たとえば、あなたは友人から「親に渡すプレゼントを何にしようか悩んでいる」という相談を受けたとします。
そこで「夫婦で使えるように旅行券がいいと思うよ」とあなたなりの“答え”を提示するのと、「夫婦で一緒に使えるものは、どんなものがありそう?」と“問い”を提示するのとでは、どちらの方が選択肢が広がるでしょうか?
「旅行券」と答えを提示された場合は、「旅行券はアリかナシか」と「旅行券」にとらわれた考えになってしまいそうです。
対して、「夫婦で一緒に使えるものは、どんなものがありそう?」と問いを提示された場合は「夫婦で使えるものなら、旅行券もいいし、2人とも料理が趣味だから調理器具やおいしい食材をあげても喜ばれそう」と考える幅が広がるので、より良い答え(この場合は、より喜ばれるプレゼント)にたどりつく可能性が高くなりそうです。
人にアドバイスをする時は、いきなり答えを伝えるよりも「問い」にすることで、複数の答えを引き出し、もっと良い答えを得ることができるかもしれませんよ。
1-2.アイデアをたくさん出したい時
ひとりで考える時も、「問い」を意識するといいことがあります。
いきなり良いアイデアを出そうとして行き詰まったり、あるいは1つのアイデアだけにとらわれてしまい、実際にやってみたらうまくいかなかった、といった経験はありませんか?
良いアイデア=よい答えを最初から出そうとしても、なかなかうまくいかないものですよね。
先述の通り、「問い」よりも「答え」の方が数が多いので、ひとつの「答え」から入ってしまうとその他の「答え」の可能性に気がつかず、選択肢を狭めることになってしまいます。
より良いアイデア=答えにたどりつくためには、たくさんアイデアを出して、その中から1番良いと思えるものを選ぶことが近道だと言えそうです。
そのために、まずは「問い」を意識して、複数の答えを出してみましょう。
ここで、「問い」からたくさんのアイデアが生まれた例をご紹介します。
ヨシタケシンスケさんの『りんごかもしれない』という大人気絵本。
一見普通のりんごに見えるけど、もしかしたら○○かもしれない、いや○○かもしれない……と膨らむ想像力が楽しいお話です。
たくさんの「○○かもしれない」のアイデアは天才的なひらめきで生み出されたように思われがちですが、実はロジカルにひとつひとつ練られたものだそう。
ところが、りんごに見えるのにりんごじゃない、“りんごかもしれない”というキーワードに当てはめたら一気に何でもアリになります。
(略)
『りんごかもしれない』の場合は、まずは、大きさを小さくしてみる、形を変えてみる、硬さを変えてみる、色を変えてみるなどと1つずつ書き出しました。そこから、現実との飛距離を考えます。ちょっと変なものからすごく変なものまで、これをどう並べたらいい流れになるかなと。
(『もう ぬげない』『りんごかもしれない』…膨らみ続けるオモシロ妄想も「まずは常識を知ることから」―ヨシタケシンスケ インタビュー前編 | ダ・ヴィンチニュースより)
つまり、「りんごかもしれない(りんごじゃないとしたら、なんだろう?)」という「問い」があったから、そこからたくさんのアイデアが広がり、たくさんのアイデアから取捨選択していい流れに並べたから、とても面白い絵本ができた! ということではないでしょうか。
まとめ
他にも、課題の解決策案をいくつか出して検討したい時、うまくいかない原因を洗い出したい時などは、いきなり「答え」から考えるよりも、「問い」から「複数の答え」を引き出した方が、効率よくたくさんの選択肢を得ることができます。
「問い」と「答え」は1:n(ひとつ:複数)の関係という基本をおぼえて、ぜひいろんな場面で応用してみてくださいね。