夏休みの宿題に苦労された記憶がある方はすでに身をもって体験されていると思いますが、何を、いつまでにやるか、スケジュールを立て、実行するのはとても大切なこと。それはプロジェクトマネジメントにおいても同じです。今回は、プロジェクトマネジメントにおける「スケジュール管理」についてお話をします。

スケジュール管理は「準備」と「運営」から成る

スケジュール管理は「準備」と「運営」という2つの側面から成り立ちます。「準備」とは、スケジュールをつくること、そして、スケジュール管理を運営する上でのルールを決めることを指します。「運営」は、「準備」の段階で決めたルールにもとづいて、つくったスケジュール通りに進んでいるか状況を把握すること、つくったスケジュールからの変更(前倒し、遅延)があるときに調整をすることです。
スケジュール管理に必要な機能

スケジュール管理の「準備」とは

スケジュール管理の準備 その1「スケジュールを組み立てる」

以前「スコープってなんだろう?」の回では、発注者の要求から要件化された成果物とタスクの実行範囲を確定し、スコープを決めるというお話をしました。たとえばシステム開発プロジェクトの場合だと、スコープが確定したらシステムの設計をし、その設計図に基づいて開発や製造を行います。そして最後につくられた成果物がきちんと作動するかどうかをテストし、問題がなければ発注者に納品し運用開始となります。

こうした一連のタスクが期限までに仕上がるよう、スケジュール管理の「準備」ではまずスケジュールを組み立てていきます。

スケジュールをつくる際には、ゴールまでの間にマイルストーンと呼ばれる定点観測ポイントを置いて、各ポイントまでに「何が、どれくらい」できあがっている必要があるかを定めておきましょう。マイルストーンとは、英語で距離を表示する道標のことを指します。そこから、プロジェクト管理における進捗を管理するために途中で設ける節目という意味を持つようになりました。具体的には、重要な成果物が完成していなければならないタイミングや、承認会議などをマイルストーンに設定します。
「何が、どのくらいできあがっている必要があるか」を定めるためには、成果物から、どのようなタスクがあるのかを洗い出す必要があります。そして、成果物が一つの場合でも、その前に完了させなければならないタスクは複数あることが往々にしてよくあります。

家を建てるプロジェクト
これは、例えば家を建てるときにも同じことが言えます。
一戸建てを建てたいと考えたAさんは、アイランドキッチン、ウォークインクローゼット、ロフトなど、こんな家に住みたいという希望(要求)を次々とリストアップします。これらの希望を予算、期限等の条件とすり合わせて「できること」(要件)だけに絞り込みスコープを確定させました。

そのスコープに基づいて建築家が設計をし、次に工務店が実際に建築工事をします。内装、外装が整ったら耐震テストや通電テストをして、居住に耐えうるかどうかの審査をします。これらのテストに合格し、初めて自宅が引き渡され、Aさんたちは無事住み始めることができます。

このように「家を建てる」という工程も、「スコープの確定」、「設計」、「製造(建築工事)」、「テスト」、「運用(居住開始)」のマイルストーンごとに分けることができます。ゴールとなる家の引渡日から逆算し、設計は◯月◯日まで、テストは◯月◯日までと、プロジェクトの中間にマイルストーンを設定することで、発注者、受注者双方が現実的なスケジュールを立て、進捗が大きく遅れるリスクを軽減することができます。

また、細かいスケジュールは、各マイルストーンを設けた後に、そこから逆算して組み立てていきます。あるマイルストーンまでに「設計図」という成果物を完成しなければならない場合、それまでに「現地調査」「設計図作成」「工務店による確認」「発注者による確認」というタスクを終わらせなければなりません。このように成果物とタスクを洗い出し、時系列に並べることで、スケジュールが完成します。

スケジュール管理の準備 その2「運営ルールを決める」

スケジュールを組み立てたら、次に運営のルールを決めます。プロジェクトをスタートしてみると、技術的な問題や担当者の体調不良、必要な部品の納品遅れなど、思わぬトラブルに見舞われることがあります。1つのタスクが遅れることで次のタスクにも遅れが生じ、最終的にはプロジェクト全体の進捗にまで影響が出てしまいかねません。そこで、進捗を報告・把握する間隔を決めることはもちろん、遅延を想定して「重要度Aのタスクは3日遅れたら手を打つ、重要度Bのタスクは10日遅れたら手を打つ」というように、一定の遅れが生じた場合のリカバリなど運営ルールを決める必要があります。

以上がスケジュール管理の基礎です。気を付けておきたい点については後述します。

スケジュール管理の「運営」とは

スケジュールを立て、運営上のルールを決めたら、次はいよいよスケジュール管理の「運営」です。プロジェクトマネージャーは定例会議や朝会、あるいはメールやプロジェクト管理ツールでプロジェクトがスケジュールどおりに進んでいるか日々の進捗を把握し、遅延や新たなタスクの発生など、計画したスケジュールからの変更が起こったときには速やかに次のような対策を検討して、影響を最小限にします。もちろん、変更が起きる前に対応できるのがベストです。

1.統合

複数のタスクが同時に進行している場合、それをまとめて1つのタスクにすることを統合といいます。例えば、開発に遅れが生じている場合、計画では開発の次にするはずだったテストを、開発と同時進行(開発とテストを1つのタスクにまとめる)で行い、期限に間に合わせるようにします。

2.分割

遅れが生じているタスクを複数のタスクに分けることを分割といいます。1人に任せているタスクがボトルネックになっている場合、人員を増やしてタスクを分割し、スピードアップを図ります。

3.前後調整

前後調整とは、前後のタスクを組み替えることでマイルストーンや期限に間に合わせることをいいます。

このほかにも、想定外の遅延やできているはずの成果物が提出されないなど、プロジェクト全体に明らかに影響を及ぼす危険があると認められる場合には、プロジェクトマネージャーは進捗確認のタイミングを短くし、状況をこまめに把握するようにしましょう。

「ここに気をつけよう」スケジュール管理

1.成果物で進捗を測っていますか?

進捗把握のすれ違いを防ぐため、「準備」の段階で「成果物」をスケジュールの進捗の基準とすることを、あらかじめ発注者・受注者間で合意しておきましょう。成果物とは、資料やプログラムなど工程が完了したときに成果として完成した文書類のことを指します。
例えば、100ページからなる資料を作成するという依頼を受けたとします。このプロジェクトの進捗の基準を、発注者側は感覚的に、作業開始から1日経ったから10%、2日経ったから20%、と捉えているかもしれません。そうではなく、あらかじめ成果物の具体的なボリュームに基づき、「30ページつくれば30%、60ページつくれば60%」と合意すれば、1番客観的で、精度が高く進捗を測ることができると言えます。

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2.タスクの大きさは適切ですか?

スケジュールの進捗を的確に把握するためには、タスクの大きさを適切なサイズにする必要があります。1つのタスクが長すぎてしまうと、現時点でどこまで進捗しているのか確認できないことになってしまったり、逆に短すぎるとスケジュールの運営上管理する手間が掛かり過ぎてしまうことがあります。1つのタスクのサイズは進捗確認が1、2回で済むような適切な大きさに切り分けましょう。
また、1人の担当者にタスクを集中させたり、休日出勤・残業を強いるなど、無理のあるスケジュールの組み方は破綻を招きます。期限までには20%ほど余裕を持ってスケジュールを組めるとよいですね。

3.前後関係のつなぎ漏れはありませんか?

スケジュールを組む際に意外と見落としがちなのが、「前後関係のつなぎ漏れ」です。再び「家を建てる」例でいえば、設計のフェーズで設計図が作成されていないにもかかわらず、製造用の柱を発注したり、柱を建てることはできません。柱を発注する、または、柱を建てるというタスクは、設計図という成果物に基づいて実行される作業です。このように、タスクとタスクの前後関係が成果物でつながれているかを確認しましょう。

4.クリティカルパスを把握していますか?

通常、プロジェクトは複数の工程の連なりによって進行しています。クリティカルパスとは、「この工程に遅れが生じるとプロジェクトの期限に大きな影響がある」という重要な工程の連なりを指します。どの工程に遅れが出たらプロジェクト全体にクリティカルな影響を及ぼすのかを、スケジュール管理の「準備」の段階で必ず把握するようにしておきましょう。

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まとめ

  • スケジュール管理の「準備」では、スケジュールをつくり、運営のルールを定める。
  • スケジュール管理の「運営」では、進捗を把握して、計画したスケジュールからの変更(前倒し・遅延や新たなタスクの発生)による影響が最小限になるよう対策を打つ。

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